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米食品医薬品局(FDA)は10月10日、成人の内分泌療法(ホルモン療法)抵抗性PIK3CA遺伝子変異陽性で、HR(ホルモン受容体)陽性HER2(ヒト表皮成長因子受容体2型)陰性の局所進行・転移を有する乳がん患者の治療薬として、Genentech社のItovebi(一般名inavolisib)をパルボシクリブおよびフルベストラントとの併用で承認した。FDAは、この併用療法を受ける乳がん患者を特定するためのコンパニオン診断デバイスとしてFoundationOne Liquid CDxアッセイの使用も承認した。Itovebiの承認は、術後補助内分泌療法中または終了後に再発し、この検査によりPIK3CA変異が確認された患者に適用される。
HR陽性乳がんは、乳がんの中でも最も多く、症例の約70%を占めている。その特徴は、腫瘍細胞がエストロゲンまたはプロゲステロンのいずれか一方または両方のホルモンに結合する受容体を有しており、腫瘍の増殖を促す可能性があることだ。なお、PIK3CA遺伝子変異は、HR陽性転移性乳がんの約40%で認められる。
FDAの承認は、第3相臨床試験である「INAVO120試験」の結果に基づいている。INAVO120試験は、術後内分泌療法中か終了後12カ月以内にがんの再発または転移が認められたか、全身療法を受けたことがない、内分泌療法抵抗性PIK3CA遺伝子変異陽性を有するHR陽性HER2陰性の局所進行・転移性乳がん患者325人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験。
対象者は、Itovebi、パルボシクリブ、フルベストラントによる併用療法を受ける群(Itovebi群)と、プラセボ、パルボシクリブ、フルベストラントによる併用療法を受ける群(プラセボ群)に1対1の割合でランダムに割り付けられた。Itovebi9mgまたはプラセボは1日1回経口投与し、パルボシクリブ125mgは21日間連続で経口投与した後、7日間の休薬期間を設ける28日を1サイクルとした。フルベストラント500mgは第1サイクルの1日目と15日目、その後は28日サイクルの1日目に筋肉内投与した。
試験の結果、主要評価項目とした無増悪生存期間(PFS)の中央値はItovebi群が15.0カ月、プラセボ群が7.3カ月で、ハザード比は0.43(95%信頼区間0.32~0.59、P<0.0001)であり、Itovebi群ではPFSが有意に延長していた。客観的奏効率(ORR)は、Itovebi群が58%(95%信頼区間50~66)、プラセボ群が25%(同19~32)、奏効期間(DOR)の中央値はItovebi群が18.4カ月(同10.4~22.2)、プラセボ群が9.6カ月(同7.4~16.6)だった。中間解析の時点で63%のデータを基に評価した結果、両群間に統計学的な有意差は認められなかったが、治療のリスク・ベネフィットの評価には参考になる結果ではあり、ハザード比は0.64(95%信頼区間0.43~0.97、P=0.0338)だった。
INAVO120試験の主任研究者の一人であるKomal Jhaveri氏は、「PI3K経路は病気の進行に極めて重要な役割を果たしており、標的とするのが困難だった。Itovebiをベースとした治療法はPFSを2倍以上に延長し、忍容性は良好で安全性プロファイルも管理可能である。Itovebiは、PIK3CA遺伝子変異を有する乳がんの治療に新たな標準治療を追加した」とGenentech社のリリースでコメントした。(HealthDay News 2024年10月16日)
https://www.gene.com/media/press-releases/15039/2024-10-10/fda-approves-genentechs-itovebi-a-target