TOP > 社説 ∨ 

政令指定都市薬剤師会の活用必要

2024年11月22日 (金)

 地域包括ケアシステムに関する目標達成時期となる2025年を間もなく迎える。薬局・薬剤師が地域において重要なプレイヤーになるためには、中小薬局を取りまとめ、行政や他の医療団体とも関係を構築する地域薬剤師会の役割が大きいのは言うまでもない。こうした国の期待に対し、地域薬剤師会の活動が思ったほど活発になっていない印象を受ける。全国に700以上ある地域薬剤師会の牽引役が必要だ。

 「日本薬剤師会、都道府県薬剤師会、地域薬剤師会の3層構造を『ボトムアップ』に変える」と高らかに宣言したのは、日本薬剤師会の岩月進会長だ。ただ、3層構造の足腰は強くない。薬局団体連絡協議会は17日のシンポジウムで、地域薬剤師会の規模や入会率にはバラツキがあり、独自運営が厳しい薬剤師会も見られることから「地域薬剤師会の再編も積極的に考えていく必要がある」と提言した。

 従来から行っている活動を遂行することで手一杯である薬剤師会も多い。地域から期待されている活動を会として新たに行うのが難しい現実がある。

 日薬が目指す3層構造では、マンパワーが足りない地域薬剤師会に対しては都道府県薬、近隣の地域薬剤師会が手を差し伸べる体制を構想しているが、そもそも都道府県薬と地域薬剤師会の縦の関係はあっても、地域薬剤師会間の横の連携がないのが現状だ。もちろん、困った時に地域薬剤師会同士で助け合える共助の関係が望ましいが、他地域を支援するほど余力があるところは少ない。独自運営が厳しい地域薬剤師会を再編し、その中から牽引役を作り出す選択肢を考えるべきだ。

 もう一つ、全国に20ある政令指定都市薬剤師会の発信力をもっと活用してはどうか。人口300万人を超える横浜市を筆頭に、100万人以上の大都市は11を数える。これら自治体は大都市として権限と財源を持つ。それと密接に関わるのが政令指定都市薬剤師会であり、地域薬剤師会の牽引役になれるはずだ。

 しかし、日薬、都道府県薬、地域薬剤師会の3層構造では地域薬剤師会に置かれ、レポートラインは都道府県薬になる。全地域薬剤師会に対して適切な配分で政策を考えていく都道府県薬と、独自性の強い政令指定都市薬剤師会では連携面で課題が生じる場面が出てきてしまう。

 ある政令指定都市薬剤師会の会長は「われわれの取り組みを直接日薬に伝えたいのに県を通さないといけないため声が届きにくい」とこぼす。

 県薬と政令指定都市薬剤師会の分断を招くことはあってはならないが、3層構造とは別に、日薬と政令指定都市薬剤師会のレポートラインを用意することも今後必要ではないか。地域薬剤師会の先頭を走る政令指定都市薬剤師会の知恵を活用することにより、3層構造を補完できると考える。日薬の発信力強化にもつながるはずだ。



‐AD‐

この記事と同じカテゴリーの新着記事

HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術