第2次石破内閣が発足し、医薬品業界の関心は2025年度の中間年改定の扱いにある。少数与党が来年度予算案編成をしなければならない異例の事態の中で、中間年改定の廃止に最も熱心に取り組む国民民主党が国会運営のキャスティングボートを握る。同じく中間年改定廃止を掲げる立憲民主党が衆議院予算委員会委員長ポストを取った。中間年改定の廃止・見直しの好機だ。
業界の課題は、▽創薬力の強化▽安定供給▽ドラッグラグ・ロスの解消▽適切な医薬品流通――の4点だが、いずれの課題にも関係しているのが中間年改定である。毎年改定は市場環境としてはネガティブ。海外のプレイヤーの協力なくしてできない創薬力強化、ドラッグラグ・ロス解消に悪影響が及ぶ。後発品を中心とした供給不安の一因は不採算水準までの薬価引き下げにあり、その歪みは流通担当者の疲弊につながっている。
前回の中間年改定ではイノベーション、安定供給、インフレ配慮がなされたが、そもそも中間年改定の根拠である「4大臣合意」にある「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」という原則が守られていない。平均乖離率の0.625倍超という平均を下回る品目も対象にするのは合意の文言から読めない。乖離率は縮小傾向にあり、改定率も小さくなっている。中間年改定を行う意義が問われている。
必要な薬が処方、調剤できないというのは、国民皆保険制度を揺るがす事態だ。「医療の質の向上」を謳う4大臣合意の趣旨にも合わない。
良いことなしの中間年改定は廃止が妥当だ。しかし、その見通しは、今の政局では明確ではない。国民民主が主張する手取りアップなど現役若世代支援、自民が抱える防衛増税と大きなテーマが優先される中で、中間年改定がテーマに載る余地がどの程度あるかである。中間年改定の事情に詳しい複数の自民党議員が衆院選で落選したことも議論の基盤を弱くしている。
厚生労働省の医政局長、保険局長を経て中間年改定と取り巻く課題に熟知する伊原和人事務次官は今月行った講演で、改定を2年に1回に戻すことで生じる負担の存在を挙げ、「(衆院選を通じて)若い人の保険料負担に社会的な関心がある中で、どのような保険料水準を適正に保つのか。これら要素を総合的に勘案して、今後各政党と議論がなされていくと思う」と述べた。与野党が主張する様々な予算事項の財源問題を気にしていることがうかがえる。
予算折衝では社会保障費が槍玉になり、薬価が狙われやすい。つまり厚労省と財務省の折衝になるが、最終的には厚労省の判断であるはずだ。
「骨太方針」では中間年改定について「あり方について検討する」とある。せめて、「4大臣合意」の原則に立ち返ることをスタートラインにしたい。