後発品メーカーの品質上の不祥事に端を発する医薬品供給不安が言われて久しい。10月現在で、医療用医薬品の約5分の1が限定出荷・供給停止の状況にある。特に国を挙げて使用促進策を実施し、今や数量シェア80%に及ぶ後発品を中心に、薬局などの現場でも慢性的な在庫不足に悩まされているとの声を聞く。
こうした中、10月から長期収載品の選定療養がスタートした。後発品のある先発品を希望する場合は、その薬価の差額の4分の1を保険適用外の特別料金として患者に負担を求めるもので、導入時点で1096品目の長期収載品が対象となっている。選定療養も先発品から後発品への切り替えを促す施策の一環だ。
差額の4分の1の実費負担が、患者にとってどの程度、後発品の切り替えのインセンティブにつながっていくのかは、今後の推移を見定めるしかない。ある薬剤師会関係者は「国や行政が十分周知していなかったため、混乱するのではないかと心配していたが、各薬局では数カ月前から対象患者に説明していたこともあり、大きな混乱はない」と現状を話す。
一方で、選定療養に対する患者の認識度合いはそれほど高くはないようで、店頭で患者に対する説明に相当の時間を費やしているとの声も聞かれる。後発品に切り替えることで、患者負担となる特別な料金が発生しないという選定療養の仕組みの解説だけではなく、昨今の後発品供給不足により変更したくても、在庫がなく変更できないケースの説明が求められるという。そのため、薬剤師の裁量で選定療養外として調剤するケースも少なくないようだ。
先日取材したある自治体での後発品安心使用促進協議会の場で、後発品の使用促進に向けた県民向けの啓発リーフレット案の審議が行われ、供給不安が続く中でのリーフレット作成・配布に反対の意見が示され、今年度の作成は見送りとなる一幕があった。
ここ数年にわたって、医薬品メーカーの限定出荷や供給停止が続き、患者への医療提供に支障が生じていることが指摘されている。医師や薬剤師などの医療関係者にとっては、後発品の使用促進のための啓発資材作成よりも、供給不安の解消を優先すべきとの認識が強く表れたものと言えよう。
11月28日に開かれた厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では、医療用医薬品の製造販売業者に「安定供給体制管理責任者(仮称)」の設置や安定供給体制確保のための体制整備を法律で規定することが了承された。
これまで医薬品供給不足関連では、厚生労働省から通知しか出ていなかった。通知は強制力がないため、医薬品医療機器等法を改正して罰則規定も設けようということなのだろう。法改正という伝家の宝刀を抜くことで、一刻も早く医薬品の供給不安にピリオドが打たれる日が来ることを願いたい。