米食品医薬品局(FDA)は12月20日、Eli Lilly社のZepbound(ゼップバウンド、一般名チルゼパチド)を、肥満成人における中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療薬として承認した。OSAの処方薬承認は初めてとなる。また、Eli Lilly社によると、Zepboundは低カロリーの食事と身体活動の増加と併用することを想定しているとのことだ。
Eli Lilly社のリリースによると、OSAは、睡眠中に上気道が完全また部分的に閉塞することを特徴とする睡眠関連呼吸障害で、呼吸の停止(無呼吸)や浅い呼吸(低呼吸)を惹起し、酸素飽和度の低下および睡眠からの覚醒につながる可能性がある。OSAの特徴の一つはいびきだが、その他の重要な症状である疲労感や日中の過度の眠気、睡眠の中断といった深刻な症状は見過ごされやすいという。
この承認は、2件の第3相二重盲検ランダム化比較試験(SURMOUNT-OSA試験1および試験2)の結果に基づくもの。対象者は、中等度から重度のOSAおよび肥満と診断された成人。ベースライン時に気道陽圧(PAP)療法を受けていなかった対象者を試験1に、ベースライン時にPAP療養を受けていた対象者を試験2に登録した。両試験において、対象者は52週間にわたって最大耐用量のZepbound(10mgまたは15mg)を週1回皮下投与する群、またはプラセボを投与する群に1対1の比率で割り付けられた。主要評価項目は、無呼吸低呼吸指数(AHI;睡眠中の1時間当たりの無呼吸および低呼吸の回数)のベースラインからの変化量とした。
ベースライン時の対象者の平均BMIは試験1で39.1、試験2で38.7、平均AHIは、それぞれ51.5回/時と49.5回/時だった。52週目時点でのAHIの平均変化量は、試験1では、Zepbound群で−25.3回/時(95%信頼区間〔CI〕−29.3~−21.2)だったのに対し、プラセボ群では−5.3回/時(同−9.4~−1.1)であった。治療群間の差は−20.0回/時(同−25.8~−14.2)と推定され、Zepbound群で有意な改善が示された(P<0.001)。
試験2のAHIの平均変化量は、Zepbound群で−29.3回/時(95%CI −33.2~−25.4)、プラセボ群で−5.5回/時(同−9.9~−1.2)であり、治療群間の差は−23.8回/時(同−29.6~−17.9)と推定され、Zepbound群では改善が有意だった(P<0.001)。
FDA医薬品評価研究センター(CDER)の呼吸器・アレルギー・クリティカルケア部長であるSally Seymour氏は、「Zepboundの承認により、OSAの特定の患者にとって初めての薬物治療の選択肢がもたらされた。これはOSA患者にとって大きな前進である」とコメントした。
FDAの承認は肥満症患者のみを対象としているが、この承認により、OSA患者がメディケアの保険適用を受けられるようになる可能性がある。メディケアでは現在、減量のみを目的とする薬については適用外となる。Eli Lilly社は、患者支援プログラム(低価格のバイアルオプションを含む)を提供して経済的障壁を軽減するなど、購入のしやすさを重視している。しかし、保険に未加入の場合、毎月の費用は1,000ドル(1ドル155円換算で15万5,000円)を超える可能性がある。(HealthDay News 2024年12月23日)
More Information
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-medication-obstructive-sleep-apnea
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2404881