健康や医療に関する情報や知識を駆使して、健康管理や比較的軽い病気・ケガの手当てを、自らの判断で行うというのがセルフメディケーションの考え方だ。最近は国民の健康意識の高まりと共に、セルフメディケーションの認知度も少しずつ上昇してきた。日本大衆薬工業協会の調査(全国1000人を対象)でも、言葉だけは知っている人を含め、認知度は6割強に上っている。
今回の薬事法改正では、セルフメディケーションをさらに普及させようとの観点から、安全性の確保を前提として、医薬品の適切な選択、薬の専門知識を持った販売員による相談応需など、リスクに応じた情報提供が行われる体制整備に重点が置かれている。
こうした中で大衆薬を販売する側は、どういう意識を持っているのか。あるメーカーの広報部門では、全国の薬局・ドラッグストアの薬剤師に、薬事法改正に伴うセルフメディケーションの意識を調査してみたという。対象母数は20店と少ないが、興味深い部分もあるので紹介してみよう。
7割以上の薬剤師が、以前に比べてセルフメディケーションを実践している人が増えてきたとの見方を示した。その根拠として、OTC薬やサプリメントの使用方法・のみ合わせ・副作用等の相談が増えていること、商品や健康に関する知識が豊富になっていること、各種の健康法を実践している人が増えたことを指摘している。
今回の医薬品販売制度改正が、セルフメディケーション推進に役立つかとの問いには「役立つ」が45%、「役立たない」が40%、「分からない」が15%。役立つとした理由は、OTC薬のリスクによる分類に応じた情報提供の充実、登録販売者の制度化、製品の表示内容充実が挙げられた。
さらに、薬事法改正をセルフメディケーション普及に一層役立てるために、販売者側に何が必要かとの問いに対しては、「消費者に信頼される情報提供の必要性(信頼される薬局)」「自分自身の知識を向上させ、カウンセリングできるようにする」「サプリメントでも最低限の服薬指導をすべき」「販売時に医療機関への受診などの説明も行う」等の声が寄せられた。
一方、行政や業界、製薬会社への要望では、「セルフメディケーションの積極的なPR活動」「薬の安全性に関する注意喚起」「第I類医薬品の拡大」「インフルエンザ判定キットなど薬局で販売できる製品の拡充」などのほか、「信頼性のないサプリメントの排除」「医療関係者等の連携」といった意見もあった。
今月21、22日に都内で開かれたセルフメディケーション推進協議会が主催する学会でも、薬科大学にセルフメディケーション教育を導入する重要性、低学年時から薬の教育を取り入れる必要性、消費者の医薬品安全使用に向けて薬局(薬剤師)をはじめとした啓蒙活動の重要性が指摘され、関係者の熱心な討議が繰り広げられた。
この中でも、今後セルフメディケーションの推進には企業、業界、行政が一体となって協力・連携する必要性が強調されたが、昨年を上回る参加者と発表演題からは、関係者にも着実に意識が浸透していることが感じられた。