中央社会保険医療協議会が15日の総会で、2006年度の診療報酬改定を厚生労働大臣に答申し、4月から施行される新点数が決まった。技術料ベースで医科・歯科が1・5%、調剤が0・6%の引き下げであり、医療機関や薬局は厳しい経営を強いられることになる。
今回の改定は、「中医協のあり方に関する有識者会議」の報告を受け、検討段階で改定の方向性が明らかにされ、それに対してパブリックコメントや公聴会が行われるなど、従来とは審議のプロセスが大きく変更された。これにより中医協審議そのものが、透明性を増したことは確かである。
だが、審議情報の公開が適切であったかというと、提示されたものは「現時点での骨子」であり、これは改定の考え方に過ぎない。中医協では、どの点数を改定するかも重要なテーマだが、最大の関心は“何をいくらにするか”である。どの項目を何点に改定したいという意思を、全く示さないままのパブリックコメントでは、国民や関係者が、改定内容の是非について、十分な意見を述べることもできない。
審議の過程で、診療側と支払側が真っ向から対立したのは、明細の分かる領収証の発行であった。明細領収証の発行は、患者に対する診療情報の開示という視点から提案されたものであったが、診療側は▽診療行為の詳しい内容は、インフォームドコンセントで説明すべきである▽全ての患者は詳細な内容を求めておらず、発行するのに費用もかかる――ことを理由に反対した。一方の支払側は、診療側が反対すること自体に、患者の知る権利を理解する姿勢があるかどうか疑問だと反論した。
結論としては、保険医療機関や保険薬局は「個別の費用ごとに区分して記載した領収証を、無償で交付しなければならない」との文言を、療養担当規則に加えることで決着した。「個別の費用ごとの区分」とは何を指すかというと、最終的には厚生労働省の関連通知などを待たなければならないが、現在のところは調剤報酬であれば、少なくとも調剤技術料(調剤基本料、調剤料など)、薬学的管理料(薬剤情報提供料、薬剤服用歴管理料など)、薬剤費、医療材料費、保険外負担(選定療養など)等に区分して、金額を示すことが想定されているようだ。
だが、この程度の分類では、患者は受けたサービスの中身を理解できないだろう。実態が分からないことは不信感を招く。保険薬局はこの際、調剤録に記載する項目ごとに金額を明示する方向へ、前向きに取り組んでほしい。患者のために実施した医療サービスであれば、自信を持って必要な費用を請求すべきであろう。さもなくば、痛くもない腹を探られることになりかねない。
調剤報酬で最も注目されたのは、調剤基本料の簡素化だ。現行の基本料1(49点)と3(39点)が合体して42点となり、基本料2は効率的な経営を行っているとの理由から、21点が19点に引き下げられる。両者の差は13点、患者負担額では約40円の開きである。
基本料2を算定している薬局が、サービスの質で劣っているならともかく、現状ではこの格差について、患者が納得するような説明は不可能だろう。日本医師会が明細の分かる領収証の発行に抵抗した背景には、一物数価になり得る点数体系を、患者へ説明できないという面もあったと思う。これから領収証を発行する中で、薬局はどのように対応するのか。
医科診療報酬は、病院と診療所の初診料を一本化し、再診料の病診格差も是正された。調剤報酬も次回改定に向けて、一本化を真剣に考える必要があるのではないか。