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正念場を迎えた薬局・薬剤師

2006年03月01日 (水)

 医療法等の一部改正法案に「調剤を実施する薬局」が、医療提供施設として明記された。薬学教育への6年制導入、診療報酬改定、一般用医薬品販売制度の見直しなどと合わせて、薬局・薬剤師は将来への展開に向けて、正念場を迎えたと言えるだろう。

 薬学教育6年制の施行を4月に控え、薬学生実務実習受け入れ施設としての薬局のあり方、指導薬剤師としての資質など、ここ数年、薬局に求められている要件は決して小さくない。同時に過去の医療法改正で、薬剤師は医療の担い手としての位置づけが明確にされたが、今回の改正案は、医療提供施設として薬局を位置づけるものであり、責務はさらに重くなってくる。

 調剤薬局をめぐる最近の状況を見ると、広域病院周辺への乱立、調剤薬局チェーン間の激しい過当競争などが目につく。しかし薬局の経営は、「儲からないから廃業する、撤退する」と、簡単に割り切ってよいものではないだろう。患者の立場に立った考え方が全くなく、薬局・薬剤師側の手前勝手な論理だけで経営するようでは、医療提供施設としては落第である。調剤薬局にとってバブルの時代は過ぎ去った。今後は、患者の信頼を勝ち得た薬局だけが生き残っていくことを、改めて心に銘記する必要があろう。

 最近の新聞報道などを見ると、医師や看護師と共に薬剤師による医療事故(調剤ミス)をめぐる報道が増えている。先日、ある地方都市で、調剤ミスをめぐって調剤薬局が訴えられる事件が発生した。医師の処方とは異なる薬剤を薬局薬剤師が調剤したために血圧が上がり、大動脈急性解離を発症して、重い障害が残ったというもの。

 処方変更前の薬剤を誤って調剤してしまった結果であり、薬剤と後遺障害との因果関係は明らかではないし、報道以外にも何らかの要因があったのかもしれないが、重大な調剤ミスであることは間違いない。しかも、患者の方が先に気付いたというのでは、薬剤師には弁解の余地のないところであろう。

 このように訴訟までは至らなくても、薬剤師として自らを省み、律することが求められるケースも少なくないと思う。薬剤師の行動を見ると、「周囲に注意して観察すれば、自分の置かれている立場や状況が分かるはずなのに」と思われる事例が、少なからず見受けられる。それだけ大きな視野で、あるいは相手の立場に立って考えたり、行動することが得意ではないのかもしれない。しかし、薬剤師を取り巻く環境の厳しさを考えると、苦手とか不得手で済ませられることではない。患者サイドの視点を持つことは大きな課題である。

 患者の立場から薬局機能をチェックする「ファーマウォッチング」という会社がある。評価結果では、薬局・薬剤師サイドでは気が付かなかった点、見落としていた部分があり、患者サイドからは不必要というものもある。ファーマウォッチングの活動は、患者の視点からそうした問題点を浮き彫りにするもの。ある調剤薬局チェーンが調査を受けた結果、指摘された点を改善することで、何店かが見事に変身したという実例がある。

 結局、重要なのは地域住民、患者の信頼を勝ち取ることであり、それが地域の医療提供機関、ヘルスステーションとしての薬局、そして薬剤師の役割であろう。視点を変えることによって正念場を乗り切り、新しい時代の薬局、薬剤師としての存在を確固たるものとしていく。年齢や男女の違いに関係なく、このテーマへ意欲的に取り組む薬局が、全国津々浦々に生まれてくる状況を切に望みたい。



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