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生涯研修、体制見直しの時期に

2006年03月08日 (水)

 都道府県薬剤師会では認定実務実習指導薬剤師の育成を含む実務実習の受け入れ、生涯学習のあり方が大きな課題になっている。先の日本薬剤師会代議員会でも、改定内容が決まったばかりの調剤報酬にはほとんど質問が出されず、多くの時間が薬学教育・薬剤師研修の関連に費やされたことからも、県薬の強い問題意識が感じられた。

 薬学6年制の実施もいよいよ来月に迫った。急きょ組み入れられた早期体験実習への対応にも追われるほか、昨年から始まった認定実務実習指導薬剤師の養成研修もワークショップの順番が、なかなか回ってこない状況もある。各県では薬剤師会、病院薬剤師会、大学等の考え方に温度差もあり、残念ながら円滑な連携体制が整っているとは言い難い。

 一方、医科大学、歯科大学と異なり、薬科大学には新設制限がない。このため2003年度に就実、九州保健福祉の2大学が設置されたのを皮切りに、各地で薬大新設が相次ぎ、06年度も含めると4年の間に21校も増える計算になる。いわゆる“無薬大県”の数も、急速に減少してきた。

 いずれにしても地元出身の薬学部受験者が増加することにより、地域での実習受け入れ体制構築が急がれているが、決して容易なことではない。最近まで無薬大県だったある県の場合、学生実習の受け入れ状況は、薬局数も学生数も数十という単位に過ぎず、「実務実習はよそ事」であった。それが薬大の新設によって、にわかに“わが県の問題”に切り替わった。これは決して珍しい事例ではなく、薬大の乱立が指導薬剤師の育成や生涯学習の充実を、結果的に急がせている。

 本紙の調査によれば、6年制元年に当たる06年度の薬学部志願者は、私立大学で軒並み203割ダウンした。とはいえ多くの県が薬大を抱える現状では、指導薬剤師の育成と実習受け入れ薬局の確保は必須。そうした背景もあってか、現場薬剤師の研修に対する要望が非常に高まっており、いくつかの県薬では生涯学習体制の充実・組み替えに向けた検討が始まっている。

 その一つとして千葉県薬は、来年度から「健康指導薬剤師」養成制度を立ち上げることとし、1年間のプログラムを構築した。最終的には試験を行うが、修了者を県薬が認定する計画だ。

 また現在、千葉県では多様な生涯研修プログラムが並行して実施されている。ところが個々の薬剤師にとっては年間を通じての明確な目標、スケジュールに則った学習体系になっていない。そのため県薬では単発研修等を整理し、研修に一定の方向性を打ち出して、学習すべき事項・内容を提示していく考えという。

 さらに、多くの研修が座学のみであることから、県薬提供の研修では、まず健康指導薬剤師養成プログラムにおいて、ワークショップなど参加型研修の実践に取り組む。つまり参加型は県薬主導とし、座学は一定の方向性を示した上で、個人が対応するような色分けを目指している。

 このほか関東圏では、茨城県薬が系統だった研修体制づくりを目指している。東北では宮城県薬が会営薬局のあり方を再考し、実践的研修の場と位置づけ、新たな生涯研修制度の展開に向けた基礎固めに着手している。

 日薬も新しい体制が決まった。3期目となる中西敏夫会長を中心に、新人2人が加わった副会長が補佐する集団指導体制が、構築されるものと見られる。薬剤師を取り巻く諸制度の見直しが進む中、その趣旨に従って薬剤師が意識改革、行動改革を実践していかなければならない重要な時期にある。生涯研修などに対する県薬、支部の取り組みをしっかり把握し、現場と乖離することのない執行体制を期待したい。



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