日本イーライリリーのアルフォンゾ・ズルエッタ社長は8月28日、都内で開いた事業説明会で、2009年上半期が市場成長率を上回る業績だったことを受け、「通期は10%以上の成長率で、10億ドルを超える売上高を達成できる」との見通しを明らかにした。その上で、今後の成長のキーとして、5月に非小細胞肺癌の適応を取得した抗癌剤「アリムタ」を挙げ、15年には売上高20億ドル、20年には35億ドルの達成を目指す方針を示した。
同社の09年上半期売上高は、薬価ベースで9%増の573億円。主力の抗精神病薬「ジプレキサ」、抗癌剤「ジェムザール」などが伸長し、市場成長率を上回る業績を支えた。5月には、抗癌剤「アリムタ」を非小細胞肺癌治療薬として発売。6月には注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬「ストラテラ」を発売したことから、ズルエッタ氏は「通期は10%を超える成長率になるだろう」と述べ、10年に売上高10億ドルを達成できるとの見通しを示した。
その上で、15年に20億ドル、20年に35億ドルの達成を目指す方針を明らかにした。ズルエッタ氏は、「今後、成長を遂げていくのはアリムタで、特に非小細胞肺癌の適応取得が起爆剤になる」と述べ、アリムタをドライバーに二桁成長を目指す方向性を示した。
さらに、中枢神経系領域、内分泌・代謝・骨領域、癌領域の3領域に焦点を当てた開発ポートフォリオの充実に取り組む。昨年は、タダラフィルの肺動脈性高血圧症の適応症で、同社として初めて世界同時承認申請を実施。09年には、骨粗鬆症治療薬「テリパラチド」、GLP‐1受容体アゴニスト「エキセナチド」の承認申請を相次いで行った。また、第III相試験中のアルツハイマー型認知症治療薬「セマガセスタット」「ソラネズマブ」に加え、第I相試験段階に12品目の化合物が控えている。
一方、同社は、戦略的パートナーシップとして、完全統合型製薬ネットワーク「FIPNet」を確立し、バリューチェーン全体で実行していく。ズルエッタ氏は「これまで多くの製薬メーカーは自前主義でやってきた」と指摘。「業界を取り巻く厳しい環境に対し、合併・買収戦略ではなく、それぞれのバリューチェーンを最大化するために、パートナーシップを結んでいく」との方針を強調。「化合物の価値を最大化するため、さらにネットワークの機会を考えていきたい」と語った。