今月の診療報酬改定で処方せん様式が変更されたことに伴い、後発医薬品(ジェネリック医薬品)をめぐる動きが、全国各地で活発化しているようだ。一部には患者への情報提供、医師への連絡などをめぐって混乱も起きていると聞く。具体的な対応策については個々の薬剤師と患者、あるいは薬剤師会と医師会などの話し合いで解決すべきことと思う。ただし今回つくられた新しい制度が、あくまでも後発薬の使用促進を目的としている点だけは忘れないでもらいたい。
後発薬の使用促進は、国の方針である。少子高齢化の進展、完治しない生活習慣病の増加、新しい医療技術の開発・登場などによって、わが国の医療費は右肩上がりで上昇し続けており、国民皆保険制度を維持することが大変な状況を迎えている。そのため高薬価の先発品から、後発品への切り替えを進める“低薬価シフト”政策が提案されてきたという流れである。
これまで後発薬の使用促進に向けては、一般名処方や、医師の了解を前提とした代替調剤といった措置が講じられてきた。一般名処方も拡大傾向にはあるものの、一般名そのものを熟知している医師が少ないという問題もあり、普及のスピードが十分とは言えなかった。
そこで今回の改定では新たな誘導策として、処方せんに「後発医薬品への変更可」のチェック欄が設けられた。チェック欄に医師が署名すれば、薬剤師は患者に対して品質や価格等の情報を提供し、患者による選択、同意を得た上で、後発薬を調剤するという仕組みである。実質的には医師の了解に基づく代替調剤であり、考え方自体は従来から容認されていたことの延長線上だが、処方せん様式が変更されたところが味噌だ。
しかし、新しい点数が設定された時の常でもあるが、今回の処方せん様式の変更でも、本来の趣旨を損なうような対応を取ろうとしている医療機関が、一部にあることが耳に入ってくる。例えば4種類の先発薬を処方していた患者の場合、後発薬への変更を可とするが、それは4種類の1種類だけで残り3種類は不可としておき、次回来院の際にもう1種類を可とする。このように段階的に後発薬への切り替えを行うというもの。
あるいはマンツーマン分業を行っているケースでは、医療機関からは後発薬への変更という処方せんが出るが、薬局に対しては従来通り先発薬を調剤するように、予め協力依頼しておくといった話も聞こえてくる。
これらは、ごく限定された不心得な医療機関だけだと思うが、特に後に紹介したような事例には、薬局は絶対に荷担すべきでない。少なくとも処方せんに、後発薬への変更を可とする医師の署名がなされた以上、それは従来通り先発薬を選ぶのか、あるいは後発薬に変更するのか、患者の意向を聞いてほしいという医師の意思表示であろう。
そのため薬剤師は、オレンジブックなどを利用して患者に品質や価格の情報を提供すべきことは当然であり、後発薬か先発薬かは、患者の選択を優先する必要がある。
また、薬局で実際にどの薬剤を調剤したかについて、処方せん発行医療機関へ情報をフィードバックすることも算定要件の一つになっており、これに適切に対応すべきことも当然である。ただ情報提供の方法については、医療機関側の考え方もあるため、都道府県単位、あるいは地域単位で、医師会と薬剤師会が一定の取り決めを行うことが望ましいかもしれない。