厚生労働省医薬食品局は、「医薬品・医療機器等安全性情報」(No.260)を公表した。三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、トラゾドン塩酸塩などの攻撃性ついて、副作用報告を整理・調査した結果、SSRIやSNRIと同様に、患者や家族は治療中の変化に注意を払う必要があると判断、使用上の注意を改訂し、注意喚起を図った。既に関連企業に対しては、7月3日付で使用上の注意の改訂指示を行っている。
国内で承認されているSSRIやSNRI以外の抗うつ薬としては、三環系抗うつ剤の▽イミプラミン塩酸塩▽クロミプラミン塩酸塩(経口剤および注射剤)▽ドスレピン塩酸塩--など9成分。四環系抗うつ剤の▽セチプチリンマレイン酸塩▽マプロチリン塩酸塩▽ミアンセリン塩酸塩--の3成分のほか、トラゾドン塩酸塩、スルピリドの計13成分がある。
今年5月15日までに報告された副作用のうち、敵意・攻撃性が認められた事例は、三環系抗うつ剤では、アミトリプチリン塩酸塩で5件、アモキサピン3件、イミプラミン塩酸塩15件、クロミプラミン塩酸塩29件、ドスレピン塩酸塩6件となっている。
このうち、実際に傷害等の他害行為にまで及んだものは、クロミプラミン塩酸塩の2件だったが、他害行為につながる可能性があったものとして、クロミプラミン塩酸塩で5件、ドスレピン塩酸塩で1件の事例が報告されている。
また、四環系抗うつ剤については、セチプチリンマレイン酸塩で5件、マプロチリン塩酸塩10件、ミアンセリン塩酸塩14件で、それぞれ敵意や攻撃性が見られた。他害行為に及ぶ可能性があったものは、セチプチリンマレイン酸塩で2件、マプロチリン塩酸塩で1件が報告された。
さらにトラゾドン塩酸塩では、18件で敵意・攻撃性が見られ、うち1件は他害行為につながる可能性があった。
厚労省では、専門家による検討を踏まえ、使用上の注意の「重要な基本的注意」に、▽不安、興奮、敵意、攻撃性等があらわれる場合がある▽基礎疾患の悪化や他害行為に及ぶ可能性がある▽患者の状態及び病態を注意深く観察すること--などを追記したほか、「慎重投与」の項に、「衝動性が高い併存傷害を有する患者」などを加えることで注意喚起を行っていく。
安全性情報ではこのほか、血圧降下剤のテルミサルタン(一般名:ミカルディス錠、日本ベーリンガーインゲルハイム)と、フェニトイン(一般名:アレビアチン錠、大日本住友製薬など)などの抗てんかん剤で、添付文書の「重大な副作用」が改訂されたことを紹介。
テルミサルタンは、2005年11月に発売され、年間使用者数は約168万人。06年4月1日から今年6月16日までに、間質性肺炎の副作用が7例(うち死亡例1例)報告された。そのため、使用上の注意の「重大な副作用」に間質性肺炎が追記された。
一方、フェニトイン、フェニトイン・フェノバルビタール(複合アレビアチン錠、大日本住友製薬)、フェニトイン・フェノバルビタール・安息香酸ナトリウムカフェイン(ヒダントールDなど、藤永製薬)、フェニトインナトリウム(アレビアチン注、大日本住友製薬)については、06年4月1日から今年の5月25日までに、横紋筋融解症の副作用報告が2件あった。死亡例はなかったが、今回「重大な副作用」に横紋筋融解症が追加された。