後発医薬品(GE)メーカーの上半期(409月)業績が好調のようだ。売上高では、対前年同期比2桁以上の大幅増収を達成。さらに通期業績でも、各社は中間期と同様に増収の見通しを明らかにしている。
背景にはもちろん、4月から実施された処方せん様式変更の影響があるだろう。同時期にメーカー各社がテレビCMを活発に展開したことと相まって、一般に対する『ジェネリック医薬品』という言葉の認知度が急速に高まった。患者の問い合わせも増え、薬局側も一定の対応を図るためにGE薬の備蓄を進めている。各メーカーとも、調剤薬局との取引が件数、金額とも増加傾向にあることが、増収要因の一つとしている。
その一方で、日本薬剤師会が行った今年4、5月の処方せん実態調査では、院外処方せん全体の約20%でGE薬への変更が可能だったが、実際に後発品に変更されたのは、そのうちの約1割に過ぎず、処方せん全体の約2%にとどまったとの結果も報告されている。GEメーカー側の出荷額自体は増加し、市場は徐々に拡大する傾向にあるとはいえ、薬局で実際にGE薬への変更が行われるまでのハードルは、まだまだ高いという実態である。
さらに日本医師会が今月初め、GE薬に関わる緊急調査として33社、73銘柄・89件に「品質・効果・副作用で問題あり」とする結果を発表した。この調査では銘柄数別・会社別に集計したところ、上位5社で44銘柄と、全体の約60%を占めることが分かった。ただ、企業名も公表されていない段階では、“問題あり”との指摘にどの程度の信頼性があるのか、また当該メーカーの製品に起因すると精査された結果かどうかは明確でない。
薬剤師関連の学術大会などでもGE薬関連の発表が増加しており、GE薬の推進派と慎重派が相まみえる討論も散見される。推進派は使用促進の最大の抵抗勢力は「薬剤師」と位置づける。ただ現場の薬剤師は、患者と接する矢面に立たされているだけに、慎重に進めたいという意識が強く働くことも否定できない。また、日医のような企業名を公表しない事例報告は、GE薬全体に対する不安を煽ることにつながる可能性もある。 現在、厚生労働省はGEメーカーに対し、▽規格揃え▽安定供給▽情報提供の拡充▽効能効果等の是正――などを求めている。いずれもメーカーにとって、期限付きで乗り越えなければならない高いハードルだ。医療現場の医師や薬剤師にはピンと来ないかもしれないが、これらは本気でGE医薬品の使用促進に取り組むという国の意思表示である。
こうした要請へ適切に対応することは、GEメーカーにとって大きな負担となる。既に対応できる企業とできない企業の間で、整理淘汰が進むと見る関係者も少なくない。GE業界の地図も、大きく塗り替えられようとしている。近く医薬工業協議会では、品質、情報提供、安定供給への対応について、厚労省のお墨付きパンフレットを作成して、医療機関などに理解を求めていく方針と聞く。
先般の公正取引委員会の調査でも、8割以上の医療関係者が、GE薬に対して不安感を持っていることが分かっている。それだけに今はGE薬について、ネガティブデータの収集も必要だろうが、有効事例の集積も薬剤師の果たすべき重要な役割になろう。
最終的には「患者・国民が強く望んでいる施策」(厚労省保険局医療課・磯部総一郎氏)である「GE薬使用促進」を処方医や国民に啓発し、その環境を整備していく上で、最も効果的な役割を担える職能が、薬剤師であることは間違いない。今後、薬剤師が科学的な視点で、「是は是」「非は非」と冷静に精査を重ねることを通じて、質の高いGE薬が国民に供給されていくことを期待したい。