26年ぶりに日本で開かれた第21回アジア薬剤師連合(FAPA)学術大会は、大きな混乱もなく成功裏に閉幕した。今回の開催は、4年前のソウル大会で決定し、準備が重ねられてきたもの。関係者の労苦が報われたといえよう。
開催が決まってからの4年間、国内的には大きな情勢変化があった。2005年に薬剤師法や学校教育法が一部改正され、今年から6年制が実施された。さらに今年の医療制度改革では薬局が医療提供施設となり、薬剤師と共に施設面でも“医療”の仲間入りを果たした。
そういう意味では、日本の薬局・薬剤師が大きな変革の一歩を踏み出した時点という、絶好のタイミングで開催されたことに加え、メインテーマも「医療における薬剤師の新しい役割」を掲げ、まさに新時代における日本の薬局・薬剤師の姿を、アジア各国にアピールするよい機会であった。
シンポジウムで取り上げられた▽薬学教育▽セルフメディケーション▽新しい薬剤師職能――の3テーマは、いささか“手前味噌”の観は否めないが、開催国という立場から、許される範囲だろう。
そうした中、FAPA開催前に開かれた日本薬剤師会の全国会長会では、医療における新しい薬剤師の役割を意識した「基準薬局の改正案」が公表された。一連の関連法規改正を踏まえ、医療に足場を置いた薬局・薬剤師のあるべき姿を明らかにしたものである。
改正案では、基準薬局制度の位置づけを「地域住民に選ばれる薬局の自主基準」と明記。さらに基準薬局の理念として、[1]調剤、医薬品の供給その他薬事衛生等を通じて、国民に対し良質かつ適切なサービスを提供する医療提供施設[2]全ての医薬品の供給拠点としての責任を果たし、地域の保健・医療・福祉に貢献する薬局[3]薬局の模範となるもの――との考え方を打ち出し、医療制度改革の趣旨に沿った内容となっている。
具体的な認定基準案については、法令等で規定される事項を10項目ほど削除すると共に、必要な要件を大きく六つのジャンルに括り、それぞれに詳細な項目を盛り込んだ。また従来の基準では「…すること」「…望ましい」という表現が多かったが、改正案では「…している」と現在進行形を多用し、簡潔な遵守事項の表現に改められた点も特徴の一つになっている。
この中では「基準薬局の開設者は薬剤師であることが望ましい」と、初めて開設者を薬剤師と明記したほか、管理薬剤師の要件も「保険薬剤師として3年以上の経験」が必要との考え方を示している。さらに指定・届出に関しても、▽在宅患者訪問薬剤管理指導▽麻薬小売業者の免許▽毒物劇物一般販売業の登録――などを要件とした。加えて医薬品販売制度改革を反映させ、一般用医薬品等の供給に関する事項など、地域の保健医療に貢献する項目が掲げられている。
薬局・薬剤師を取り巻く環境は、FAPA加盟国の間でも大きな違いがあり、大会では制度上の位置づけを含め、様々な課題が提起された。しかし患者、ユーザーへの貢献を目指す気持ちは共通だ。日薬が定めた新基準を、わが国の薬局・薬剤師全てがクリアして、足場を固めることが重要であり、この目標を達成することが、“アジア薬剤師のリーダー”につながる近道と言えよう。