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“PROガイダンス”と日本の対応

2006年12月1日 (金)

 近年、新薬や医療新技術の開発に当たっては患者のQOL評価が重視され、様々な評価の物差しが生まれている。日本で今年承認された新薬にもQOL評価が行われたものが数多くある。

 そのうちアリセプト、リツキサンについては、薬価算定組織が市販後調査成績に基づいて、前者を「患者コミュニケーション能力等のQOL改善」、後者を「生存期間の延長」等でプラス評価を下し、市場拡大再算定にも利用された。新薬の薬価算定に、“薬剤経済学的視点”が導入され始めたことを裏打ちする出来事だった。

 厚生労働省保険局の磯部総一郎薬剤管理官は10月に行った講演で、「補正加算に対する企業側の意見表明は、自己評価が不足しているものが多い」と指摘した。規制側が、既に評価を下す際の物差しを準備していることを、臭わせるような発言とも取れた。

 そんな中でFDAは今年の2月、「PRO(Patient Reported Outcomes)ガイダンス」を発表した。国際医薬経済・アウトカム研究学会(ISPOR)日本部会は直ちに翻訳作業に取りかかり、今月の第2回学術集会では、その途中経過報告と、PROガイダンスの解説が行われた。日本語では暫定的に“患者報告のアウトカム”と訳されたが、またも新しい概念が登場したといえる。

 規制側に提出するデータの種類を、[1]臨床検査・機器でのデータ[2]クリニカルレポート・アウトカム[3]患者レポート・アウトカム――に3分類するなら、このPROガイダンスは、[3]のエンドポイントに関するものであることが分かる。

 FDAはPROについて、あくまで参考データとしながらも、一定のお墨付きを与える考えのようである。確かに癌性疼痛のように、患者の主観情報が根拠データの物差しとして確立しているケースもあるが、従来の薬剤評価の概念からすれば驚きである。

 FDAの動きは先走りすぎると思われるかもしれないが、実はPROデータは20世紀末から続々と出始め、現在ではクリニカルレポートや臨床検査データ等の提出量の半分近くに達している。今後もさらに増える傾向にあるという。

 患者中心、患者本位の医療、患者しか分からない苦痛、こうしたものを拾い上げて評価するのは望ましい方向と思う。しかしメーカーが独断的な指標でデータをつくり、プロモーション活動や保険会社との価格・導入交渉に使っていく、それは杞憂かもしれないが、そうした懸念がガイダンス発表の背景でもある。ISPORも科学的精査に関し、積極的に協力、介入しているという。

 日本はどうか。このPROガイダンスに限定すれば、成り行きを静観している状況だが、最近の規制当局は、薬剤経済学に対して相当乗り気になっているようだ。当然ながら薬や医療機器の価格評価には、財政問題がつきまとっている。

 日本でも薬剤経済学の本格活用は、まさに“前夜”の様相を呈している。早急に患者、医師、保険者、医療政策の決定者、医薬品産業などが、活用の考え方について整合を図る必要があり、産官学を軸としたコンセンサスの醸成が望まれる。




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