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生命科学に興味を持つ理科教育を

2006年12月6日 (水)

 中学生や高校生の「理科嫌い」現象が進み、大学進学でも理科系を敬遠する学生の増加が目立っている。あまつさえ18歳人口の減少が懸念される昨今、“科学技術創造立国”を国是として掲げる日本としては、優れた理科系の人材を育成していくことは、国家的な最重要課題といえるだろう。

 「日本の子供は、他国に比べて成績は悪くないが、年齢と共に理科嫌いが多くなる傾向にある」という声も珍しくない。子供が理科嫌いになっていく要因は、いくつも挙げられている。中学校での「理科」授業は、高校入試のためのカリキュラムが、生徒の理解度に関係なく淡々と進められ、子供に興味を示す余裕すら与えていない面もある。

 そうした姿勢が、理科を「面白くない暗記科目」にし、理科離れを誘発しているようだ。ただ暗記量では、英語や社会科の方が遥かに多い。理科が暗記科目として苦になるのは、やはり興味の問題だろう。

 一方、高校の理科の履修科目は、理科全般の考え方や歴史などを横断的に学習する理科総合A・Bと、各分野を専門的に学習する生物I・II、化学I・II、物理I・II、地学I・IIなど細分化され、合計13科目からなる。ところが、専門的な科目は、その科目内での完結型学習が中心で、各科目の横断的学習が行われていないがためのデメリットが生じている。

 例えば、生物Iに生体膜の成分として蛋白質や炭水化物など物質についての記述があるが、その働きについては化学の分野に属するため記されていない。すなわち、生物Iを選択しても、生命科学のほんのさわりの部分を学ぶだけで、基本を深く学習することができない。さらに、生物Iでは、酵素の働きなど生命科学を理解するために必要な重要事項については、全く触れられていない。

 また、現在の理科2科目選択制度がもたらす弊害によって、高校で一度も生物の教科書を広げたことのない学生が、医学部に入る事態も発生しているという。このままでは、科学技術創造立国の将来にも大きな影を落としかねない。

 資源が乏しい日本が繁栄し続けるには、生命科学教育の重要性を改めて認識する必要があるのは言うまでもない。そのためには、小学校の段階から、自然の中にある様々な現象や変化に、興味を持てるような授業内容が求められるだろう。幼い頃から「理科とは物事の理を発見する学問」という認識を芽生えさせることで、中学以降の理科に対する取り組み姿勢が自ずと変わってくるはずだ。

 高校の理科教育でも、理科総合A・B履修者レベルを対象に、蛋白質・脂質・炭水化物などの生体構成成分の検出や成分分析、性質を学べる簡単な実習が行われるようになれば、生命科学に興味を持つ学生の増加につながるのではないか。生命科学に興味を示す学生が増加すれば、日本の基礎科学を支える人材育成に明るい兆しが見えてくる。

 「木を見て森を見ない」現在の高校理科教育をもう一度見直し、生命科学に興味が持てる理科教育カリキュラムが確立されることを期待したい。




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