最近、マスコミで取り上げられる機会が多い「メタボリックシンドローム」。突然の心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などを予防するためには、日頃からの健康意識を高めることが重要となる。行政や企業、各種団体などが主催する、メタボリックシンドローム等をテーマとした講演会も増えてきた。
NPO法人の地域診療情報連携協議会は、メタボリックシンドロームの予防を視野に、前橋市内の40歳から70歳の地域住民を対象として、今年2月から来年3月まで毎週1回「予防医学勉強会」を開講している。講師は全員がボランティアで、群馬大学教授、地域の開業医、臨床検査技師、理学療法士などがそれぞれの専門分野を担当し、分かりやすく説明するもので、いわゆる健康コミュニティーの役割としても期待されている。同協議会ではこのほど、「未病」の概念について講義を行うと共に、参加者に勉強会に関するアンケートを行った。
「未病」という言葉については、知らない人が過半数だったが、講義を受けた後には、多くの人が理解できたと回答。健康と病気の中間にある未病という概念について、「難しいが大切だと思う」「概念を知ることで病気の予防になる」「予防医学を力を入れて勉強したい」など、疾病予防という観点から、重要なことだとする意見が数多く寄せられた。また、自分の健康を維持するために心がけていることとしては、食事を筆頭に運動、サプリメント、健康食品、漢方、ヨガ・太極拳など、様々な回答があった。
健康診断の結果については、8割弱が毎年のデータあるいは今年のデータを持っていると回答。健診で基準値から外れた場合にどう対処するかでは、ほとんどの人が医師・医療関係職種の人に相談すると回答するなど、定期的に勉強会へ出席している人たちだけに、健康意識の高さがうかがえる。さらに、近所に「街角健康相談所」のようなものがあったら利用したいと思うかでは、85%が「利用したい」と答えた。
協議会ではアンケート結果から、「健康、食生活について意識するようになり、テレビ・雑誌等の医療に関する情報にも積極的に興味を持ち、日常生活の中でも家族との会話や食事・運動等の行動変容が見られる。参加者相互のつながりも励みになっていることがうかがえる」など、予防医学勉強会が個人の健康管理と地域の健康レベル向上に、成果を見せていることに期待を寄せる。
ここで調査の内容を紹介したのは、未病という概念が、薬業関係者らが推進に力を入れている“セルフメディケーション”の位置づけと、極めて近いものがあると考えるからだ。生活者が主体となって病気の治療・予防、健康の維持・増進を図っていくことが、セルフメディケーション本来の趣旨であり、その環境整備に向けて、医療・医薬・介護・運動・食生活その他の関係者による取り組みも徐々に進められている。
調査では「街角健康相談所」的な機能に対して、住民から高い期待感も示されたが、これに最も近い存在といえるのが、地域に密着した薬局・薬店、ドラッグストアではないか。言い換えれば「国民はセルフメディケーションの環境づくりを求めている」ともいえるわけで、このニーズを再確認することが重要だ。