「薬剤師新時代の鼓動―マザーレイクからの発信」をメインテーマに、大津市で開催される第42回日本薬剤師会学術大会の開催が約1週間後に迫った。9月上旬時点での参加登録者は7000人を超え、主催の地元滋賀県薬剤師会でも参加見込み者を当初の7500人から8500人に上方修正するなど、多くの参加者を想定した形で準備に臨んでいるようだ。
今大会では、参加者増の要因ともいえる目玉イベントが凝縮されている。初日の式典後には昨年、薬学出身者として初めてノーベル化学賞を受賞した下村脩氏(ボストン大学名誉教授)を招聘しての特別記念講演が行われる。また、女優の吉永小百合さんが、薬局薬剤師の役柄で主演する映画「おとうと」のキャンペーンで,監督の山田洋次氏と共に登壇する。医師や看護師を主人公とする映画やドラマは数多くあるが、薬剤師が主人公となる映画ということで、日本薬剤師会側の強い意向もあったようだ。いずれも、学術大会としては前代未聞のイベントには違いない。
今年の学術大会は,5題の特別講演と15の分科会で構成されている。分科会は全て、薬剤師を取り巻く環境に密接した重要な位置づけにある。特に「新時代の薬剤師像を探る―将来ビジョンに向けて」の中では、今回の政権交代が将来ビジョンにどう影響するのかという意味で興味を惹かれる内容だ。
また今大会から、一般演題(口頭・ポスター発表)の募集に際して、日薬が学術大会の一般演題(会員発表)について制定した投稿規程に基づき、滋賀県薬として査読委員会を設置。一般演題の査読審査が試行的に行われたことも大きな転換点だといえる。精査された一般演題数は543題となった。
薬剤師が今後、さらに社会的な役割を十分、発揮していくためにも、学術的水準のレベルアップは必須だ。本格的な査読委員会の運用は次回の長野大会からとなる。
一方、学術大会のプログラム終了後ではあるが、2日目午後から「薬学生による公開シンポジウム」が「未来の薬剤師」をテーマに行われる。2012年に卒業を迎える6年制薬剤師教育の真っ直中にある薬学生たちが、薬剤師職能に向けた将来ビジョンをどう考えているのかなど「生の声」を直接、聞いてみるのもよいかもしれない。薬学生による国民へのアンケート結果発表なども報告されるようだ。新年度には薬学生の長期実務実習も始まる。将来を担う薬剤師たちが、どのような方向性を描いているのか、注目されるところだ。
現在、日薬としての公益法人改革や12年の6年制薬剤師の輩出を睨んで、より質の高い学術大会が求められる。特に、薬局や店舗販売業で勤務する薬剤師にとっても、資質向上や専門性発揮に向けたモチベーション向上の意味から、自らが研鑽して日常的に行う業務を通じた中で、やはり優れた演題を発表していくことが必要だ。薬剤師職能の社会的な確立に向け、意義のある大会になることを期待したい。