民主党中心の政権となって、早1カ月が経った。政治主導による国家運営に切り換え、血税である国家予算の使い方を大変革すべく取り組んでいるが、いかんせん、相手はこれまで主導権を握ってきた強者の官僚であり、悪戦苦闘の様相は国民から見ても明らかだ。
公金の使い方に国民の関心が集まっている最中、精神障害者社会復帰施設関連団体による5000万円超の補助金不正流用事件や、少し前には奈良県の病院による診療報酬の搾取疑惑など、不正が次々と報道されている。
福祉団体の事件では20日に会長らトップが逮捕され、病院事件に関しては、15日に奈良県が設置した調査再発防止委員会に対して、県からこれまでの調査結果が報告された。報道によると、過剰な検査等を繰り返し、あげくに勝手に疾病を作り上げ、不必要な手術をして,診療報酬を不正受給していた実態が明らかにされたという。
しかも、診療報酬点数設定で問題になりかねないと、以前から指摘されていた通り、入院期間が長くなり診療報酬のメリットがなくなった患者(ここでは健康な人であるが)は、複数の病院をたらい回しにされていた疑惑も浮上する始末だ。
いつの時代でも公金を騙し取り、私腹を肥やす輩はいるものだ。逆の見方をすると、国民から預かった大事な税金や保険料が、なぜこのように垂れ流されているのかを疑問に思う。厚生労働省関係に限らず、農業、道路などでも同様の傾向にあるほか、今や天下りの代名詞となった各省庁の所管団体への補助金垂れ流しも後を絶たない。
自らが稼ぎ出すのではなく、自然に集金されるため、自腹が痛まないからチェックシステムも整えていないとは思いたくないが、それがあったとしても、この甘さは目に余る。形を変えた振り込め詐欺の被害者のようだ。
国民の生命に直結する医療や福祉において、悪意を持って金儲けすることは決してあってはならないし、あったとしたら、崇高な仕事をしている人間としての倫理観を疑わざるを得ない。これは、民間の一般企業においても然りであり、特に規模が巨大化すればなおさらだ。
社会保障、その中の医療に不可欠な医薬品業界においては、メガにまで成長した多くの企業が存在している。開発や製造の領域を担う人材も多いが、製薬企業が存続していくためには,医薬品を販売しなければならない。その中枢を担うのが、メーカーのMRと、卸のMSである。
MSは、M&Aや効率化の追求などによって減少傾向にあるのに対して、MRは2008年に増加した。医薬情報担当者教育センターによると、2008年度のMR総数は4・2%増えて5万8400人になったという。また、新たなコア・カリキュラム案も発表されており、求められるMR像に向けて教育刷新が行われる予定だ。
MRとMSは、直接・間接的に販売へ関与するのであるから、一般よりも高い倫理観と使命感を抱いて仕事をしなければならない。利益は必要だが、それが最優先の目的であってはならない。各企業の社員統治は当然、業界全体としても,不正な方法による利益確保は,絶対に阻止しなければならず、そのためには自主チェックシステムが必要になる。一旦、表面化すれば、前出の輩と同じ運命を辿ることを忘れてはならない。