中央社会保険医療協議会の支払側と診療側は25日の総会で、次期診療報酬改定に対する基本的な考え方を提示した。支払い側は、賃金・物価が下がり、失業率も高い社会状勢の中で、国民の負担増につながる診療報酬の引き上げに反対を表明。一方、診療側は、医療崩壊を阻止し、医療再生を図るためには、過去のマイナス分も含めた、診療報酬の大幅な引き上げによる医療費全体の底上げが必要と主張した。
支払側は、景気や雇用情勢の悪化に伴う保険料収入の減少、高齢者医療制度への支援金・納付金の負担など、保険運営の財政基盤が厳しい状況にあることなどを踏まえ、「保険料引き上げに直結するような、診療報酬の引き上げをする環境にはない」と、引き上げに反対の姿勢を示した。
ただ、病院勤務医や産科、小児科、救急医療の疲弊にも理解を示し、「必要度の高い医療に対しては、大胆かつ重点的な評価を行い、限られた財源を効率的に配分するよう、見直しを図っていくことが不可欠」ともした。
また、医療の効率化推進についても言及。「再診料の統一を含めた病院・診療所の格差是正、包括払いの推進、後発品のさらなる使用促進等を図る」ことを求めた。さらに、イノベーションの評価も考慮した、薬価・医療材料の価格の適正化などを図る必要性も示した。
診療側は、2002年から08年までの4回連続のマイナス改定で、病院はもちろん、地域医療を支える診療所、歯科診療所、薬局の経営もさらに厳しい状況にあると主張。
国民・患者が望む、安心で良質な医療を安定的に提供するため、「次期診療報酬改定に当たっては、過去のマイナス改定を回復し、病院の入院基本料をはじめとする、診療報酬の大幅な引き上げによる医療費全体の底上げを強く求める」と要望した。
財源の効率的・効果的配分を行うべきと主張する支払側に対し、診療側の邊見公雄委員(全国自治体病院協議会)は、「過去4回の改定で、トータル7~8%の引き下げになった」とし、公費の投入も含めた医療費全体のアップを、中医協として意見具申することを提案した。
これに対し、公益側の森田朗委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、「公費で穴を埋めるには、他の主張に対し説得力のある形でメッセージを出さないと、せっかくの議論が無になる」と、議論を深める必要性を示した。
遠藤久夫会長は、「なかなか意見の一致は見られないが、ひとまず公益委員預かりとしたい」と述べ、公益委員が意見を整理し、再度、総会で審議した上で、改定率が決まる前の12月上旬をメドに、中医協としての意見を取りまとめたい意向を示した。