日本小児臨床薬理学会は、子どもに適切な薬物療法を提供する「小児薬物療法認定薬剤師」(仮称)の制度確立に向け、検討に入った。小児の薬物療法では、日常的に適応外使用が行われ、適切な用法・用量、剤形が存在しない医薬品を、子どもに投与しなければならない過酷な状況にある。こうした中、患児に最適な薬物療法を提供するためには、小児の特性を十分に理解した専門的な薬剤師が必要と判断。今後、同学会ではワーキンググループを立ち上げ、認定薬剤師の確立に向けた具体的な検討を行い、詳細を詰める予定だ。
小児薬物療法認定薬剤師は、「小児の特性を理解し、それぞれの小児に適した薬物療法を提供できる資質を有し、医療提供機関において業務を実践できる者」と定義。小児科領域で地域医療を含めた医療チームの一員として、専門的知識を習得し、能力と適性を備え、医療従事者と患児・保護者の必要に応じて使用される医薬品を、「くすり」にするための助言・行動ができる薬剤師の養成を目的としている。
今回、明らかになった実施要綱とカリキュラム案によると、認定対象は保険薬局または病院に勤務する薬剤師。初回認定要件として、▽小児臨床薬理学会の会員であること▽4年制課程卒薬剤師にあっては新カリキュラム対応:自己研修を修了していること▽6年制課程卒薬剤師であること▽所定の研修会を終了していること▽病院勤務薬剤師においては、小児科の薬剤管理指導業務を行っており、医師からの推薦書があること。薬局勤務薬剤師においては、小児科領域処方せんを月規定枚数以上応需施設に勤務していること--を満たす必要がある。
認定に必要な要件には、[1]成長過程にある小児の特性を列挙できる[2]小児栄養の特徴を列挙できる[3]小児に適正な薬剤、剤形を選択できる[4]対小児特有の薬剤管理指導技術を有する[5]実施された薬物療法の有用性等を評価できる[6]小児用医薬品の適応拡大に貢献する[7]地域薬剤師として小児医療に貢献する--の7項目を挙げている。
特に重視しているのが、患児・保護者に対するコミュニケーションスキル。そのほか、小児特有の発達への考慮、適応外使用、剤形変更医薬品の有効性・安全性・安定性をはじめ、小児治験への対応からドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待(ネグレクト)への対応まで非常に幅広く、専門性の高い内容となっている。
認定を取得するためには、これら7項目からなる1コマ1時間、1日5コマ計10日間、全50時間程度の研修会を受講し、各項目ごとにスモール・グループ・ディスカッション形式の試問を受け、合格する必要がある。
ただ、会員の小児科医から「実地研修の必要性」が指摘されており、さらに、小児医療施設での実地研修を取り入れるかどうか検討を進める。
また、認定期間は3年間の更新制となる。更新は、3年間に小児科学会が指定する講習会などに参加し、必修単位15単位を含め30単位以上取得するか、認定薬剤師研修会の再受講や小児科関連の研修で、合計30単位以上取得する方法のいずれかによって行う。
同学会では、今後、新たに小児薬物療法認定薬剤師制度の確立に向けたワーキンググループを設置し、これらの案をもとに制度設計の具体化を進める方針だ。