日本製薬工業協会会長 庄田 隆
2008年5月に製薬協会長へ就任してから、早くも2年近くが経とうとしています。この間、リーマンショックに始まる世界的な金融不安の発生による株価の下落や円高の昂進、そして米国でのオバマ政権発足、国内における政権交代など、私たちを取り巻く経済・政治情勢は、急激に変化しています。
目まぐるしく変わる環境にあっても、新薬の継続的な開発と安定的な供給を通して世界の人々の健康に貢献することは、製薬協に加盟する企業の変わらぬ使命であり、当協会としてもこの認識を新たにして、今年も活動に取り組んでまいります。
日本において、いわゆる「ドラッグ・ラグ」問題が顕在化してから、既に何年も経っていますが、これまでの間、製薬協はこの問題を解決するために、様々な取り組みを進めてまいりました。その代表的な取り組みが、官民対話を活用した政策提言であり、また薬価制度改革案の提案です。
新政権の発足によって、政策決定プロセスは変わりましたが、国民に対して「より良い医薬品をより早くお届けする」という目標は、国民共通のものであると確信しています。本年も政府関係者・国民の皆様のご理解をいただきながら、政府と業界トップとの直接対話の場の設置を働きかけるなど、引き続きドラッグ・ラグの解消に向けた取り組みを強化してまいりたいと思います。
薬価制度に関しては、一昨年に日本製薬団体連合会から中央社会保険医療協議会薬価専門部会に改革案を提案して以来、中医協において議論が活発に行われてきました。世界で3位の新薬開発力がありながら、他の国々よりも開発着手が遅れる、つまり日本市場の優先度が低くなっている原因の一つに、薬価制度の問題があります。これを解決するためには、特許期間中の新薬の薬価が下がらない仕組みとする一方で、特許が切れた後は、後発品に置き換わっていく薬価制度改革の実現が大変重要です。
昨年は、中医協における議論の進捗が見られました。研究開発型製薬産業としては、得られた収益を研究開発投資に向けることで、革新的な新薬の創出につなげるという制度の趣旨を、改めて認知すると共に、関係者の皆様に正しくご理解いただく努力を、重ねていく必要があります。また、昨年設立した未承認薬等開発支援センターの機能により、未承認薬・適応外薬問題の解消に努め、ドラッグ・ラグの解消に向けて、前進できる年にしたいと考えています。