日本医薬品卸業連合会会長 別所 芳樹
昨年の卸業界は、新型インフルエンザの流行によるワクチンの供給と、2年目を迎えた流通改革に、総力をあげて取り組んだ1年でした。
インフルエンザの流行につきましては、卸連として「新型インフルエンザ対策ガイドライン」を作成し、卸各社に事業継続計画の策定をお願いしました。
また、新型インフルエンザワクチンの流通スキームにおいても、その供給には当初から関わりを持って、国・都道府県との協議を継続し、メーカーと医療機関との間の毛細血管型流通網で迅速かつ円滑に行い、概ね順調に機能いたしました。本年も医薬品卸としての社会的使命を果たすと同時に、安全で安心して働いていただけるような環境をつくることも、薬卸連として大事な役割だと思っております。
また、流通改革につきましては、昨年はその2年目として取り組んで参りました。「未妥結の是正」につきましては、一定の成果を上げられたと思っております。従って、昨年11月に発表されました薬価本調査の結果は、従来にもまして正確なものとなったのではないかと思っております。
反面、一部の医療機関では、妥結に至らなかったことも実態としてありました。この問題の解決に向けて、本年も引き続き取り組んでいかねばならないと思っております。複数の学識経験者からも、「長期交渉にゴネ得を許してはいけない。早く妥結したところにインセンティブを」という意見が出されましたが、妥結の遅いところが得をするということのない制度を、業界全体で考える必要があるのではないかと考えています。
「総価取引の是正」についても、一定の成果は得られましたが、薬の価値に見合った価格形成という観点からいきますと、まだまだ道半ばの面もあるのではないかと思っております。
本年は一層、メーカー、医療機関、薬局、時には行政にも協力を仰いでいかなければならないと思っております。例えば、昨年メーカーを訪問し、MRの皆さんにも、もっと自社製品の価格に関心を持ってもらいたいとお願いしました。同時に本年の薬価改定を前にして、流通改革に対する考え方をヒアリングさせていただきました。加えて本年は、病院やチェーン薬局が医薬品を購入する際の交渉に、薬の価値を十分に理解している薬剤師にも、ぜひ関わっていただくことを、運動として起こしていきたいと思います。
懸案の「薬価維持特例」について、厚生労働省から「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」という提案がされました。競争のない新薬、特許のある医薬品、長期収載品、ジェネリックといった薬それぞれの価値認識が、医療機関、メーカー、卸の三者統一の意識のもとに、形成されなければならないのではないかと考えています。
さらに薬卸連では、トレーサビリティの確保を推進するため、全ての医療用医薬品に製造番号・有効期限を付した流通コードのバーコード表示に向けて、議論を行って参りました。これは医薬品流通の効率化だけでなく、医薬品の安全性の観点からも、実現しなければならない課題です。早期実現へ向けて、今年も行政の協力を仰ぎながら、メーカーに導入への理解をいただけるよう引き続き要請して参ります。
また、新たに設置しました国際委員会を中心に、外資メーカーへの訴求として、新たな取り組みをしたいと思っています。日本の卸は欧米の卸と違い、独特の機能を持っています。それは医師の薬の選択、特に診療所医師の薬の選択に関わり合うような仕事を行ってきたことです。こうした日本の卸の機能は、世界に冠たるものであり、社会的インフラとしても価値の高いものだと確信しています。国際委員会では、欧米の様々なシステムを研究していますが、これからは日本の卸が持っている素晴らしい機能を世界に向けて発信し、あるいは外資メーカーにPRする必要があると思っています。
大衆薬市場におきましては、改正薬事法が施行され、ほぼ半年が経過しました。大衆薬のリスクごとに販売体制が大きく変化し、新たな課題も生じておりますが、引き続きこの市場の活性化に向けて、医薬品卸としての役割を果たしていかなければなりません。
ところで、昨年は第2回日韓医薬品流通フォーラムが東京で開催されました。本年9月には、韓国ソウルでIFPW総会が開催されます。IFPW総会の開催に当たり、韓国の医薬品都売協会から当連合会に対して、参加協力の要請が来ております。同じアジアの連合会として、東アジアの医薬品流通のため、できる限りの協力をしたいと考えております。
昨年の世相を表す漢字は「新」でありました。新政権、新型インフルエンザ……、これに業界では新薬価制度も挙げなければなりません。予感される時代の新たな変化は、決して楽観できるものばかりではありませんが、医療の基盤を支えているという自覚を持って、山積する課題に挑戦していきたいという気持ちを新たにしています。旧年にも増しますご支援をお願い申し上げます。