日本OTC医薬品協会会長 三輪 芳弘
2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻後、世界経済は大きな打撃を受け、日本も“戦後最悪の不況”に見舞われ、大幅なマイナス成長を余儀なくされました。金融安定化策や財政出動が功を奏し、国内景気は底入れするところまでこぎ着けましたが、反発力や復元力は弱いと言わざるを得ません。OTC医薬品市場も厳しい環境にさらされていますが、幸いなことに昨年4月から11月までは、前年比100・2%と、何とか前年実績を維持しております。
昨年6月、「新販売制度」が施行されました。私どもメーカーは、有効かつ安全で良質な製品を供給することに加え、これまで以上に情報提供に努めることが求められております。販売者には説明や相談の義務が課され、生活者がOTC医薬品をより安全かつ適正に使用できる環境が整いました。
また、スイッチOTCを一層促進する制度となったことから、生活者の健康に対する多様なニーズに応えることができるので、セルフメディケーションの一層の進展が期待されます。
日本OTC医薬品協会は、三つの重点目標を掲げて活動しております。1番目はOTC医薬品市場の活性化、2番目はOTC医薬品の役割を広く生活者にアピールする広報活動、3番目はアジア太平洋地域におけるセルフメディケーション推進活動です。
まず、OTC医薬品市場の活性化は、既存製品の効能表現の見直しや生活習慣病など、新たな領域へのスイッチOTC薬の活用を推進することにより、国民の健康問題への選択肢を増やすと共に、中長期的に医療費の抑制に貢献することができると考えております。
例えば、スイッチOTC薬については、その社会貢献を医療経済学の観点から定量的に検証するため、慶應義塾大学、一橋大学に研究を委託し、その研究成果を昨年12月に「OTCカンファレンス09」として発表いたしました。新販売制度が定着する鍵の一つは、医療用医薬品の成分をOTCにスイッチする第1類医薬品が拡大するかどうかにかかっています。
2番目の広報活動は、OTC薬の位置づけや社会的意義を生活者に分かりやすくご理解いただくこと。例えば、OTC医薬品協会主催のセミナーなどを通じて、食品衛生法で規制される「トクホ」や「健康食品」と、薬事法で規制される「OTC薬」の違いを、生活者に正しく認識していただく啓発活動のことであります。
最後に、アジア太平洋地域のセルフメディケーション推進という「国際化」への取り組みであります。アジア地区の経済的発展には、目を見張るものがあります。今年11月に台湾で開催されるWSMIアジア太平洋地域会議にて、「アジア太平洋セルフメディケーション協会(APSMI)」を設立する活動を強化しています。
日本OTC医薬品協会は、これら3大重点目標を含めて、昨年5月の総会で公表した「OTC医薬品産業活性化ビジョン」の実現に向けて、着実な活動を進めてまいります。今年も「自分の健康は、自分で守る」セルフメディケーションを推進し、OTC医薬品業界の発展に努めてまいりますので、皆様のご指導、ご協力をお願いいたします。