2010年を迎えた。昨年は、1月のオバマ米国大統領の“チェンジ”から始まり、日本でも8月の民主党大勝という総選挙結果を受けて政権交代が実現し、まさに“チェンジ”の年となった。今年はそれをどのように浸透させていくのか、試練の年といえよう。
さて、年末には2010年度予算案が閣議決定され、診療報酬改定率も、10年ぶりの全体プラス改定で、0・19%増額されることになった。診療報酬本体部分の配分は、従来の医科・歯科・調剤の1:1:0・4が、技術料の実態に合わせることや、これまで低水準にとどまっていた歯科に若干上乗せした形で見直され、1:1・2:0・3と、調剤への配分が低くなった。これにより、本体は医科1・74%増、歯科2・09%増、調剤0・52%増となった。
一方、引き上げ財源捻出のため、薬価は実勢価格との乖離率をもとに、医療費ベースで1・23%(薬価ベース5・75%)、材料価格は1・55%の引き下げが行われる。財源としては、両方の引き下げで5000億円捻出されるが、本体が5700億円であり、実質的に700億円の医療費増になる計算だ。
調剤報酬改定では、後発医薬品調剤体制加算要件の数量ベース化、変更調剤による在庫負担の軽減などの後発品使用促進面を中心に、ハイリスク薬投与患者への服薬指導、長期投薬、湯薬の調剤料、調剤基本料の特例などが、検討項目として挙がっている。
しかし、調剤薬局にとっては、こうした報酬が引き上げられたからといって、収入の多くを占める薬剤費がそれ以上に引き下げられ、従前にも増して薬局経営が厳しいものになるのは目に見えている。
以前、ある薬局の経営者は、「いくら技術料が上がっても、薬剤費がそれ以上に落ち込み、総収入は落ちる。人件費は圧迫できないので、それだけ収益も落ちる。銀行などは収益などの評価をもとに資金を貸し付ける。資金調達もままならない状況にある」と嘆いていた。今回も、こうした事態が危惧される。
しかし今、調剤主体から薬歴主体へと、調剤業務の流れを変えていくべきだという主張がある。これは、調剤料・調剤基本料頼みの薬局経営に、経営者たる薬剤師自身が危機感を持っていることにほかならない。処方せん受付時から、患者と関わることの必要性を示すもので、今までの意識を“チェンジ”し、薬剤師の姿勢を地域に浸透させ、信頼してもらうことが課題といえるだろう。
一方、昨年6月は改正薬事法が全面施行され、OTC薬の新販売制度がスタートした。大手ドラッグでは、コンビニやスーパーマーケットなどとの提携、調剤薬局の併設など、様々な事業展開が行われている。新販売制度の認知度は70%程度と高いが、医薬品のリスク分類、販売方法・陳列方法などは、まだ一般社会には浸透していないようだ。
OTC類似医薬品の保険外しなどの問題もあったが、今後、スイッチOTC薬の増加など、医療におけるOTC薬の比重は確実に高くなっていく。その中で、薬剤師や登録販売者は、セルフメディケーションというキーワードの中で、どのように地域に認知されていくのか。
“チェンジ”した、あるいはしなければならないモノを、その趣旨通りに浸透させるにはどうしていくべきか。課題の多い1年だ。