一部では回復傾向が見られる日本の景気だが、依然として厳しい環境下にあるのは間違いない。OTC薬業界も、その例外ではなく、日本OTC医薬品協会は25日の会見で、調査会社の集計による4~12月累月の前年比は99・7%と、わずかではあるがマイナスに転じたことを指摘し、「今年度の残り3カ月間で、OTC薬市場の前年実績確保を目指していきたい」(三輪芳弘会長)とした。
昨年6月から新たにスタートした新販売制度では、小売業界との連携もあり、当初懸念された商品へのシール貼付や返品の課題は無事にクリアできたものの、第1類薬の売上減少などの新たな課題も発生した。
この理由としてOTC薬協は、「第1類を取り扱わないで、第2類・第3類のみを販売する店舗も出てきた、実際の販売時間が減少した、生活者自身が商品を自由に手に取って購入できないことなど、小売側・生活者側の双方が、販売方法の変化に慣れていなかったことが大きな原因と思う」としている。
前記したように、昨年4~12月累計のOTC薬市場の前年比は“微減”との調査データが出ているが、会見でOTC薬協の上原明副会長は、「実感としては、もう少し落ちている感がある」とした。大手チェーンなどでも、前年より増加している企業は少なく、むしろマイナスという企業を多く聞くことから、自身の感想を述べたものだ。
夏場からの天候不順、新型インフルエンザの流行に伴って、発熱などの際には医療機関の受診が強く勧められたことで、感冒薬の売れ行きに影響したことも一つの要因といえる。
これまで同様、上原氏は今回の販売制度改正は、生活習慣病対策も含め、セルフメディケーション意識の高まりも含めて、OTC業界にとって絶好のチャンスであることを挙げたが、一方で「(第1類薬の)本格的な回復には、3~5年くらいかかる覚悟もいるだろう」との私見も述べた。
適切な情報を提供し、販売時の相談に専門性を発揮し、安全性を確保することこそが、OTC薬本来の販売のあり方とはいえ、売り手側、買い手側双方にこうした感覚が浸透するのに、もう少し時間がかかるのではという見解だ。
OTC薬協は昨年5月、「OTC医薬品産業活性化ビジョン」を策定した。協会設立から20有余年が経過し、社会環境や国民の健康に対する意識など、業界を取り巻く環境が大きく変化したことから、09年から14年までの協会の目指す姿であるビジョンを示したものだ。数値目標としては、既存市場の活性化のみならず、新たなOTC市場を創製し、「生産額1兆円を超える産業を目指す」としている。
その行動目標は、▽OTC薬の役割拡大▽国際化への対応▽利便性・安全性の確保▽協会機能の拡大・向上――と多岐にわたる。
現在、政府もセルフメディケーションの振興に期待感を示していることから、医薬品業界への期待が高いのは間違いないところだ。市場活性化に向けて、OTC薬協では製配販・行政との連携をさらに推進し、ビジョンの実現に向けた活動を展開している。その成果を期待したい。