特定健診・特定保健指導制度がスタートして、もうすぐ2年が経過する。メタボリックシンドロームの基準は、改めて紹介するまでもないが、「腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上」で、▽中性脂肪値が150mg/dL以上▽HDL‐C値が40mg/dL未満▽収縮期血圧が130mmHg以上、または拡張期血圧が85mmHg以上▽空腹時血糖値が110mg/dL以上――のうち、二つ以上当てはまる人が積極的支援者となる。
疾病予防の観点から、特定健診の基準値は、治療のそれより低く設定されている。基準値の是非に関しては、専門家の間で様々な議論があるものの、この制度によって「国民の健康に対する意識づけ」が根づきつつあるのは評価できる。適切な基準値設定は今後、学術的な検討を重ねていかなければならない。
これまで特にクレームの多かった腹囲の基準値については、日本肥満学会がようやく重い腰を上げて再検討を開始した。世界で唯一の「男性が女性よりも細い」基準値が、どう是正されるか注目されるところだ。
腹囲の基準値の検討もさることながら、今後は、メタボリック、ひいては生活習慣病を予防するための「分かりやすい指標の設定」も必要不可欠になるだろう。
分かりやすい指標として、具体的にどのようなものが考えられるか。
その一例として、動脈硬化の新指標として最近注目されている「LH比」が挙げられる。「LH比」とは、LDL‐CをHDL‐Cで除した値で、LDL‐CとHDL‐Cのバランスをきちんと把握できるのが特徴だ。
わが国の死因の30%を占める「心筋梗塞」や「脳梗塞」を引き起こす動脈硬化は、これまで悪玉コレステロールといわれるLDL‐Cの管理が重要視されていた。だが最近、善玉コレステロールといわれるHDL‐Cの上昇が、動脈硬化の退縮に重要な役割を担っていることが明らかにされ、動脈硬化の治療と予防にはLDL‐CとHDL‐Cの適切な評価と管理が求められるようになった。
LDL‐Cが増加すると末梢組織にコレステロールが溜まるため、LDL‐Cは高くない方がよい。逆に、HDL‐Cは、末梢で余ったコレステロールの汲み出しを促す役割を担っているため、低くない方がよいというわけだ。
この二つのコレステロールを臨床現場で評価する新しい指標がLH比である。特定健診でも通常の検査項目の中にLDL‐CとHDL‐Cが含まれているため、これを追加するのはそう難しいことではないだろう。
日本人の臨床データによると「LH比が2・5を超えると動脈硬化の程度が顕著」との報告があるという。今後、達成されるべき目標値の設定が必要となり、さらなるデータの収集・評価を行うことが必須となっている。
LH比のような疾病予防を目的とした分かりやすい指標を考案し啓発することは、一般の人たちの疾病予防に対する理解の向上につながるのは間違いない。
さらに、医師や薬剤師が分かりやすい指標を患者説明に活用すれば、より適切な指導が実現するものと期待される。