厚生労働省と国立感染症研究所は、2008年には1万例を超えていた麻しん発生が、09年には大きく減少し、3桁の741例になったことを公表。目標である麻しん“排除”が、12年には達成できる可能性ができた。ただ、中学1年生と高校3年生の2回目のワクチン接種率が、90%に届いていないことから、これら年代の接種を推奨している。「感染症週報」(10年第4週:1月25~31日)で紹介した。
09年第1~53週(08年12月29~10年1月3日)の麻しん発生は、08年よりも93%減少した。週別の報告数から見た分析では、08年に認められたような、明らかな流行期といえるピークはなく、10~30例前後の報告が継続していた(週平均14例)。最も多かったのは第29週の30例、最少は第53週の2例だった。
都道府県別に累積報告数は、千葉県116例、東京都112例、神奈川県97例、大阪府57例、埼玉県44例、愛知県29例、福岡県25例、広島県23例、新潟県18例、北海道17例の順となっている。
年齢群別では0~4歳301例(40・6%)、15~19歳72例(9・7%)、20~24歳/35~39歳57例(7・7%)、10~14歳55例(7・4%)、5~9歳51例(6・9%)の順となっている。麻しんワクチン接種歴別の報告数は、接種歴なし176例(23・8%)、1回接種352例(47・5%)、2回接種32例(4・3%)となっており、1回接種者が最も多かった。
国では08年度から5年間、1歳児や小学校入学前のワクチン接種勧奨の徹底、1回しか定期接種の機会がなかった中学1年生、高校3年生を対象に、2回目の定期接種を導入しており、その成果が出てきたものと見られる。ただ、中学1年生の接種率は85・1%、高校3年生が77・3%と、まだ低い状況もあることから、厚労省などでは、この年代の積極的なワクチン接種を呼びかけている。
また週報では、「このように麻しん発症数が少なくなると、感染経路が不明で、臨床症状のみでは、他の発疹性疾患との鑑別が困難な例が増加しくるため、麻しんの検査診断が重要なる」とし、医師などに対し、麻しんを疑った場合には、保健所を経由して、地方衛生研究所での検査を実施してほしいと呼びかけている。