日本ベーリンガーインゲルハイム(BI)は、1月にパーキンソン病治療薬「ビ・シフロール」について、国内初のレストレスレッグス症候群(RLS:むずむず脚症候群)治療薬としての追加適応を取得し、販売を開始した。国内で治療が必要な重症患者は200万人と推定されている。ただ、未だに疾患の認知度が低いことから、同社は中枢神経系(CNS)専門MR約100人を投入し、睡眠専門医と神経内科専門医をターゲットに、「ビ・シフロール」の情報提供を進める。一方、開業医には、約1万件の医療機関・保険薬局を対象に実施する市販直後調査を通じて浸透を図る。当面は、RLSの疾患啓発に注力し、中期的には「ビ・シフロール」全体売上の約15%を、RLSの適応症で獲得したい考えだ。
「ビ・シフロール」は、2004年1月にパーキンソン病治療薬として発売されて以来、パーキンソン病治療薬市場の20%以上とトップシェアを誇る。適応追加はRLSが初めてとなる。
RLSは、脚の内部に不快な異常感覚が起こる神経疾患だが、専門医以外には疾患自体があまり知られていないのが現状。患者、医師の双方の認知度が低いため、患者は皮膚科、整形外科、内科などにわたっており、適切な診断、治療が行われてこなかった経緯がある。また、認知不足から、多くの患者が治療を受けていないと見られている。
こうした状況を捉え、同社は、国内初のRLS治療薬「ビ・シフロール」として、約300人の睡眠専門医、約1万人の神経内科専門医をターゲットに、情報提供を進める方針だ。また開業医には、約1万件の医療機関・保険薬局を対象に実施する市販直後調査を通じて、RLS治療薬の認知度向上に取り組むと共に、専門医への紹介を促していく。
ビ・シフロール&マチュアプロダクトマーケティング統括部長の原健一氏は、「まずは、疾患を認知してもらうことが大切。Webサイトなどを活用しながら、なるべく専門医を受診してもらう流れを作っていきたい」と話す。
RLS治療薬は、「ビ・シフロール」が初めての薬剤で、ゼロからの市場開拓となる。原氏は、「RLS治療薬は、既に確立された市場のシェア獲得を目指すマーケティングとは全く違うため難しいが、疾患の認知度向上と正比例して、販売が拡大していくだろう」と見る。ただ、「1社だけではできることに限界がある」と指摘。今後、他社薬剤の参入による市場活性化に期待感を示した。
RLS群治療薬として「ビ・シフロール」を投与する場合、用量を1日1回0・125mgの低用量から開始することに加え、突発的睡眠の副作用にも注意が必要となる。原氏は、「初めての治療薬なので、用量の違いと副作用を、非専門医の先生にきちんと伝えていくことが重要」と話す。
既に同社は、中枢神経系領域の製品として、睡眠導入剤「レンドルミン」を販売する中で、医師と薬剤師向けに、睡眠に関する冊子を活用した情報提供を行ってきた。「ビ・シフロール」の適応追加を受け、RLSを睡眠障害の一つと捉え、販促活動のシナジー効果を生かしながら疾患認知の浸透を図る。
当面の課題は、RLSの疾患啓発と位置づけるが、今後、パーキンソン病治療薬としてトップシェアを維持しながら、RLSでの実績を積み上げたい考えだ。