「生の情報」をマッチングに活用

中西氏
薬剤師を中心に医療系人材の紹介業を手がけるユニヴ(代表取締役吉田雅信氏)。人と人とが顔を合わせる、アナログ的なきめ細かい手法へのこだわりが特徴だ。薬剤師から求職の登録があれば、コーディネーターが訪れて詳しく話を聞く。一方、薬局など求人側にも足を運び、求人票には書かれていない様々な情報を把握する。こうして得た詳細な「生の情報」を生かすことによって、求職者が望む職場と求人側が望む人材を適合させやすくなり、相互の満足感が高まるという。
ユニヴは、大学生の新卒採用を支援する会社として21年前に創業。2001年頃から本格展開を開始した人材紹介業が時流に乗り、中核事業として大きく成長した。
現在では、大阪本社のほか、東京と福岡に支社を構えており、45人のスタッフが全国をカバーしている。
採用コーディネーターの中西拓也氏は、「インターネット全盛の時代にあえて逆行するが、求職者、求人側に対して、アナログ的に人と人とが顔を合わせながら、業務を行うのが最大の特徴」と話す。
薬剤師から電話やインターネットを通じて求職の登録があれば、コーディネーターが訪問し、1時間半前後、面談する。転職の理由、希望する働き方や待遇、勤務地、知識やスキルなどについてじっくりと話を聞き、人柄も把握する。
一方、求人登録があった時などには、その薬局や病院、企業をコーディネーターが訪問し、全体的な雰囲気を把握するほか、経営者や担当者の考え方、経営方針、今後の事業展開とそれに必要な人材などについて詳しく聞く。
求職者から「あの薬局が気になる。自分に合うかどうか確かめたい」との相談があれば、コーディネーターがその薬局の求人状況を確認した上で訪問し、情報を収集する場合もある。
こうして得た「生の情報」を相互に突き合わせることによって、求職者、求人側の希望や適性に応じた就職と人材確保が実現しやすくなる。
「求職者からよく、『求人票だけでは、条件面はどこもほとんど違いはなく、どのように絞り込めばいいのか分からない』と聞く。求人票にはない生の情報があれば、求職者は選択しやすい。アナログ的に動く価値がある」と中西氏は強調する。
最近は特に若い薬剤師を中心に、待遇面だけでなく、転職先の経営状況や今後のビジネス展開、教育システム体制などを重視する傾向が強まってきたそうだ。「調剤薬局の淘汰に向けて、将来の安定性を気にしている。薬剤師の飽和に備え、スキルや知識を身につけられる環境をすごく意識している」(中西氏)
求人側も、優れた経験や能力を持つ薬剤師を求める傾向が強まってきた。在宅医療に進出するため、その経験を持つ薬剤師を求めるなどの事例がある。
一方、コーディネーターから薬局に対し、「こんな能力を持つ薬剤師がいる」と、提案することも少なくないという。
中西氏は最近、弁理士を目指し勉強したが事情から断念し、薬局への転職を決意した薬剤師を、成長著しく法令遵守の必要性が高まる薬局チェーンに紹介したことがあった。「この薬局だったら薬剤師としても働けるし、法律面の知識も生かせる」との中西氏の提案が受け入れられ、双方から喜んでもらえたという。
ユニヴへの求人登録数は累計で約5000件。店舗数では約2万軒に達する。薬局や病院が大半だが、製薬関連企業の管理薬剤師、薬事、DIの求人や、医薬品卸の教育担当者の求人もある。
薬剤師の登録数は年間約2500人。昨年から、登録を待つだけでなく、全国各地で市民会館やホールを借りて現地の薬剤師を集め、個別に面談する取り組みを開始した。インターネットに疎い中高年など、今までフォローしきれなかった層の取り込みにも成功している。
ユニヴ
http://pha.univ-med.jp/index.php