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新薬価の成否、問われる流通改善

2010年3月26日 (金)

 21日(現地)に米国下院で国民皆保険の実現に前進する医療保険制度改革案が可決し、23日には大統領が署名して成立した。公的医療保険制度の導入は見送られたものの、加入義務など公的な束縛もある政府主導による制度が、何よりも自由を優先する米国で成立したことは、ある意味で画期的な出来事だ。

 採決では、提案側の与党民主党から一部議員が反対票を投じるなど、可決が危ぶまれる一面もあったが、結局、賛成219票、反対212票で、7票という僅差で何とか可決に持ち込んだ。就任以来、内政の最重要課題に位置づけて取り組んできたオバマ大統領だが、可決の際に見せた安堵の表情が印象的だった。

 米国では、低所得者を対象としたメディケイド、高齢者を対象としたメディケアを除けば、ほとんどの国民は全額自費による民間保険に加入している。当然、失職者など低所得者層の大半は無保険者であり、その数は約4600万人と推定されている。1961年に国民皆保険制度がスタートして半世紀になる日本では、想像もできない数である。今回の法案成立によって、このうち約3200万人が加入できるようになり、加入率は95%に達する予定だという。

 注目されるのは、今後10年間に必要となる政府が負担する費用9400億ドル、円高の現在でも日本円に換算して約85兆円という、これまた日本とは比較できないほど莫大な金額だ。違憲だとして23日は既に14州で訴訟を起こされている現状や、国民の半数が法案に反対だという世論調査結果もうなずける。法案は成立したが、課題と障壁は山積している。

 かくも、医療保険制度は各国独自の事情によって、千差万別の形態をとっている。日本の医療保険制度もご多分に漏れず、なかなか複雑だ。

 医療法に基づいて設置される医療法人は、医療法第7条5項によって非営利であることと規定しており、病院などの医療法人は営利目的では設置が許可されない。高い一定水準の医療を安定して一部負担のみで、皆保険に加入するほぼ全て国民に提供するためには、医療保険制度などから報酬が拠出されている。

 財源面で複雑なのは、医薬品・医療機器メーカーや卸など、利益を追求する純粋な民間企業である。利益を追いながらも、その収益の大半は医療保険制度、薬価制度に拠っている。

 何があっても必ず下がり続ける、世界に冠たる日本の薬価制度は、4月から新薬価制度に移行し、新薬創出・適応外薬解消等促進加算が導入される。これまで例外なく低下を続けてきた薬価が、加算によって維持される初めてのケースも出現する。この加算は、なおさら民間と公的な財源のあり方を複雑にする。

 制度の議論は行政の場で進めてもらうとして、まずは、新薬価制度を成功に導くことが業界の使命になった。まだ道半ばの流通改善と表裏一体で進めることが必須であり、メーカーと卸の連携、協調、行動いかんに成否が委ねられているといっても過言ではないだろう。

 忘れてならないのは、試行ということであり、新薬等の開発、流通改善で成果が見られなければ、次期には存在しない。メーカーも卸も本気度合いのほどを、世間に知らしめる時がやってきた。2年で消滅し、後世、「幻の」という枕詞がつき、そんな加算もあったなと、懐かしがられるだけの存在にならないために。




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