英市場調査機関データモニターは、米下院が可決した医療保険改革法案について、「製薬市場にとっては両刃の剣になる可能性がある」との見解を発表した。同社は、「短期的には製薬市場の落ち込みにつながる可能性がある」としながらも、「2015年以降は保険加入者の増加に伴って、医薬品消費量が増大し、マイナス影響が緩和される」と分析。中期的には恩恵がもたらされるが、不安要素も否定できないとした。
同社は、「製薬市場には、全体的に医療保険改革が業界に恩恵をもたらすとの強い確信が見られる」と指摘。ただ、製薬市場に与える財政的影響については、短長期的な不安要素も潜んでいるとした。
実際、2011年に大型製品の特許切れに直面する業界にとって、医療保険改革法案の可決は「最悪のタイミング」との見方を示し、短期的にはコスト上昇に加え、割引やキャッシュバックを余儀なくされ、製薬市場の落ち込みにつながる可能性があるとした。
一方、15年以降は、保険加入者の増加に伴う医薬品消費量の増大によって、こうしたマイナス影響が緩和されるとの見通しを示し、中期的には製薬市場に恩恵がもたらされると予測した。
ただ、政府の関与は必然的に大きくなることが予想されることから、「政府・保険会社が負担する医療費の増加は、製薬市場へのネガティブな圧力が増すことにもつながり、市場全体の伸びを抑えることになる」と指摘。さらに、「医療保険費が財政を圧迫することになれば、業界にとって不利な対策が導入される可能性も否定できない」と懸念材料を示した。
法案「支持」もなお課題‐PhRMAが声明
また、米国研究製薬工業協会(PhRMA)は、今回の医療保険改革法案を支持する声明を発表した。PhRMAは、現行制度を「質の高い医療を阻み、全く受け入れがたい」とした上で、「今回の法案可決は、より広く国民が医療保険と質の高い医療サービスを享受できるきっかけになる」と高く評価した。
一方で、「法案自体には多くの課題が残されており、改善の余地がある」と指摘。一例として、選任手続きなしに設立された独立支払諮問機関の権限が大きすぎると懸念を示し、「米議会の議決や司法・行政の審査もなく、メディケア(高齢者向け医療保険)の抜本的変更が可能になる」と危惧を表明している。