4月1日に発足した第一三共エスファの玉井伸正社長は、本紙のインタビューに応じ、10月に開始予定のエスタブリッシュト医薬品事業について、「まずは、第一三共が強い循環器領域のロングセラー製品を取り扱い、ジェネリック医薬品(GE薬)も揃えた形でスタートしたい」との考えを示した。営業体制は、第一三共のMRが出向する形で対応し、エスファとの連携強化を図る。具体的な取り扱い品目数、販売体制は検討中だが、玉井氏は「全ての面で安心をしっかり届けることを考えたい」と話している。
第一三共グループは、3月に第二期中期経営計画を発表。特に日本事業では、新たにGE薬と長期収載品を扱う第一三共エスファを立ち上げ、エスタブリッシュト医薬品事業に参入する方針を打ち出した。玉井氏は「GE薬市場の伸び、後発品使用促進の追い風を考えると、このチャンスを逃す手はない。いまのタイミングが一番大事だった」と背景を説明する。
現在、10月の事業開始に向け、エスタブリッシュト医薬品の取り扱い品目数、販売体制の検討を進めているところだが、玉井氏は「基本的に要員として、コントラクトMRの活用や新規採用は考えていない」と方針を語る。
具体的には、第一三共の医薬営業本部からMRが出向する形とし、エスファと連携した補完的な販売体制を構築する計画だ。玉井氏は「第一三共本体とエスファの連携が、しっかり途切れない形を考えていきたい」と話す。第一三共が展開するMR2400人の営業部隊は、エスタブリッシュト医薬品の情報提供を行わないが、玉井氏は「2400人の体制を背景としているのは大きい。GE薬についても、これまでと違った情報提供活動ができるのではないか」と、連携に自信を示している。
品揃えについては、「安心を届けるためにも、最初から多くの品目を集めるのではなく、まず第一三共のロングセラー製品を何品目か移行し、GE薬も加えた形で事業をスタートさせたい」との意向を示す。当面は、第一三共が強みとする循環器領域の製品を扱うことで、エスファの特徴を打ち出したい考え。長期的には、顧客ニーズに合わせ、幅広い領域の製品に品揃えを拡大していく予定だ。
一方、開発・製造体制は、当面GE薬は他社との共同開発、製造委託で対応し、長期収載品に関してはグループ子会社「第一三共プロファーマ」の製造拠点を活用することにしている。
特に注目されるのは、子会社化した印ランバクシーの活用だが、玉井氏は「米国でFDAの輸入停止措置の問題が解決すれば、ランバクシーを活用したローコストオペレーションを展開していこうと考えている」との計画を示し、「われわれとランバクシーの強みを生かせる環境が生まれたときには、かなりのシナジー効果が期待できる」と強調する。
また、第一三共の特許切れ製品をエスファが取り扱う可能性については、「主力品に高脂血症治療薬メバロチン、抗炎症薬ロキソニンがあるが、これらはまだライフサイクルマネジメント(LCM)を進めている製品」との認識を示した上で、「LCMを終了したロングセラー製品であれば、エスファでGE薬を扱う可能性はある」としている。
2015年には売上高500億円を掲げるエスファだが、玉井氏は「マイルストーンとして、それだけの存在感を発揮できる会社になっていたい」と先を見据えている。