中堅CROのACRONETは、南京大学グループのCRO「江蘇南大蘇富特生物医薬科技有限公司」(NANDACRO)に資本参加し、中国で合弁事業をスタートさせる。親会社のソフトウェア企業「NANDASOFT」が86%、ACRONETが14%を出資し、技術支援を行うことで、グローバル水準のCRO業務を推進する。海外展開を模索してきたACRONETは、合弁事業を通じて、中国市場に本格進出する足がかりとしたい考えだ。
ACRONETが出資する「NANDACRO」は、南京大学グループのソフトウェア企業「NANDASOFT」の100%子会社として、4月に設立された。南京大学は、医学部付属病院で治験を実施していることに加え、グループ内に製薬企業の「南大薬業」、医療機器企業の「天健」を保有する。さらに、新薬開発を支援する「NANDACRO」を設立し、ヘルスケア分野の強化を図った。
ただ、中国国内のCRO業務は、独自のローカルGCPで運用され、世界水準の品質には達していないとされている。こうした中で「NANDACRO」は、将来的なグローバル展開を視野に入れ、ICH‐GCPの水準を目指していた。今回、中国進出の機会をうかがっていた日本のACRONETから出資を受けることで、CROとしてレベルアップが実現できると判断した。
一方、ACRONETは、14%の資本参加によって、「NANDACRO」に常勤社員2人を派遣し、中森省吾社長が非常勤CEOに就任することになった。こうした体制によって、ACRONETは日本の高い品質を「NANDACRO」に取り込み、中国での治験受託を活性化させたい考えだ。
また、日本・欧米の既承認薬の中国販売に向け、南京大学グループと一体化したライセンスビジネスにも乗り出す。ACRONETを通じて「NANDACRO」が治験を受託し、南京大学グループの南大薬業が中国当局のSFDAに申請、承認取得、販売にこぎつけるというものだ。今のところ、ACRONETの出資比率は14%にとどまるが、「NANDACRO」の成長度を見ながら、さらなる増資を検討する。
今後、両社の合弁事業は、まず中国国内の治験を受託していく方針。ローカルCROとしてレベルの底上げを図ることで、2011年内には中国トップレベルを実現。その後、アジア、日本、欧米を含めたグローバル治験の受託体制を整え、一気に世界を目指す。
ACRONETは、13年に売上高100億円の目標を掲げているが、そのうち中国ビジネスで15~20%を確保したい考えで、いよいよ中国進出を本格化させる段階に入った。