菅直人首相は11日、衆参両院本会議で初の総理所信表明演説を行い、「強い経済、強い財政、強い社会保障の一体実現を、政治の強いリーダーシップで実現する」と強調した。与野党の壁を越えた超党派による財政健全化検討会議の創設を提案したほか、社会保障の充実によって雇用創出を通じて、経済成長を促すことが可能とする認識を示した。
菅首相は、従来の経済論議における社会保障の位置づけを、「少子高齢化を背景に負担面ばかりが強調され、経済成長の足を引っ張るものと見なされる傾向があった」と分析し、「私はそのような立場に立たない」と主張した。
また、医療・介護、年金、子育て支援などに、不安や不信があっては消費が上向かないと解説。「経済、財政、社会保障を相互に対立するものと捉える考え方は、180度転換する必要がある。それぞれが互いに好影響を与えるWIN・WINの関係あると認識すべき」と呼びかけた。鳩山路線を踏襲して新成長戦略にライフ・イノベーションを重点分野に位置付け、「成長戦略の視点から強い社会保障を目指す」と念を押した。
さらに、制度の再建によって、「少子高齢社会を克服する日本モデル」を打ち出す意向も表明した。新たな年金制度に関する基本原則を示すほか、医療の安心の確保や、安心して利用できる介護サービスの確立に努めるとした。社会保障や税の番号制度の導入に向けて、国民に具体的な選択肢を近く提示することも明言した。
このほか、鳩山内閣が着手した無駄遣いの根絶や行政の見直しなど、「戦後行政の大掃除」を続行する意気込みも語った。その中で、1996年に自身が厚生相として薬害エイズ問題に注力したことにも言及し、「行政の密室性の打破も進める」と述べた。