「広域・連携化していくドラッグ量販の動きに対応していくことが難しい」。今年開かれた新年会の席で、渦中の企業関係者はこう漏らした。昨年12月22日、メディセオ・パルタックホールディングス(メディ・パルHD)の子会社パルタックと小林製薬の連結子会社コバショウの経営統合に向けた協議を開始する趣旨の発表が行われ、一般用医薬品流通業界には少なからず衝撃を与えた。
パルタックは昨年4月以降、メディ・パルHD傘下企業の薬粧部門を順次統合。従来の日用雑貨・化粧品に大衆薬を加えた卸事業の融合を進めている。一方でコバショウは小林製薬の卸事業全般を担い、関東・近畿に強い地盤を持ちつつ、未進出地区での薬粧事業の買収など、攻めのM&Aを展開してきた。
経営統合に向けた手法は今後の協議事項とされているが、メディ・パルHDがコバショウを事実上買収するとの見方は強い。2年ほど前にはメディ・パルHDは薬粧部門の売上高で、コバショウは総売上高で、それぞれ年商3000億円を標榜していた。皮肉にもその2社の経営統合により、同じ目標を相互に補完していく形になったわけだ。
こうした全国規模の薬粧流通の動きを背景に、遅れていた大衆薬卸の再編が進むとの論調もあり、次なる大衆薬流通に絡む再編の噂も絶えない。ただ既に、相当の部分まで再編は進んでいる。大衆薬卸はこの10年間で台頭してきたドラッグストア企業の大型化、広域化の流れに伴い、バイイングパワーによるセンターフィー要求などで翻弄され続けてきた。
これに対して、医療用と一般用の双方の医薬品を取り扱う「兼業卸」の多くは、薬粧部門の赤字を医療用で得た利益で埋める格好で対応してきた。しかし、メーカー帳合中心で展開してきた卸の多くは、薬粧部門への戦略的な経費投下もできず物流効率化も限界に達し、相互補完の形による同部門の統合が地域、卸系列を中心に進んでいるのが今の現状だ。
大衆薬を取り巻く環境も激変している。2009年の改正薬事法完全施行で、リスク分類された医薬品を対象に、既存の薬局・薬店、ドラッグストア以外にも、コンビニエンスストアや地域のホームセンターなどが販売参入することも予想される。卸業として、こうした業態に対応していくには、大衆薬だけではなく化粧品、健康食品のほか、日用雑貨製品まで取り扱う必要に迫られ、業容拡大は生き残りのための条件にもなってきた。
一方で、医療費削減に向けたセルフメディケーションへの取り組みとして、大手量販ドラッグのみならず、地域に根ざした薬局、薬店など零細小売店への医薬品供給も、卸の果たすべき大きな役割となるはずだ。だが現状、流通再編に伴う効率化に伴い、零細小売店経営者からは「MSの訪問頻度も激減して情報も少ない」との声もよく聞く。
市場経済の原則に従った対応といえばそれまでだが、その先にある終着点がどのような結果をもたらすかは自明の理であろう。元々医薬品卸の歴史は薬局、薬店への大衆薬の供給事業を起点として成長してきた。それだけに地域軽医療を担う薬局、薬店を存続させるための手段も講じるべきであろう。
今回のパルタックとコバショウの経営統合に向けた合意は「顧客起点の卸機能強化を図る」という考えが一致したとしている。本当の意味での顧客起点の大衆薬流通のあるべき姿が確立されることを期待したい。