文部科学省の2011年度予算概算要求は、今年度当初から4・3%増の総額5兆8348億円で、科学技術予算は4・0%増の1兆0761億円となった。従来型の要求部分は、1割を超えて削減し4兆9720億円にとどめ、公開の場で他府省と事業を競う「元気な日本復活特別枠」で、従来型要求の深堀り額の3倍まで上積みできるルールを使い、予算規模を拡大させた。
特別枠要望は、総額が基礎額を3538億円上回る8628億円で、ライフ・グリーンの2大イノベーション、日本発の人材・技術の世界展開、大学の機能強化イニシアティブなど10項目の施策を並べた。
このうちイノベーション施策には、788億円を計上している。新たに38億円を投入し、革新的な分子標的薬やバイオマーカーなど、次世代の癌治療を実現する研究に取り組む。また、50億円をかけ、幹細胞研究を厚生労働省との協働で、前臨床・臨床研究まで一貫して支援するほか、生命動態システム科学をネットワーク型で推進する。うつ病や認知症といった、精神・神経疾患の克服に向けた診断・治療法の研究開発も、20億円で推進する。
民間資金を活用し、実用化を支援すると共に、関係投資機関と連携して事業化を促す研究成果最適展開支援事業や、橋渡し研究加速ネットワークプログラムを実施する147億円の「明日に架ける橋」プロジェクトも盛り込んだ。次世代スーパーコンピュータ「京」を中核とする最先端研究インフラの整備には、398億円を充てた。
人材・技術の世界展開に、448億円を要望。日本発の重粒子線癌治療技術を高度化させる戦略的事業を22億円で進める。海外の研究者や医師に対する研修を通じた日本方式の国際標準化、正常な臓器を傷つけない照射法、治療時間の極小化などによる国際競争力の保持、さらなる小型化・標準医療化に向けた調査研究に取り組む。
大学の機能強化の規模は1200億円。メディカルイノベーションを担う国立大学病院の機能強化など、大学の教育研究基盤の整備を促し、大学を核とした成長サイクルの形成を目指す。
このほか、科学研究費補助金を特別枠350億円を含め、2100億円に拡充させた。研究費の複数年度執行を可能にするために、基金化などの仕組みの導入を検討すると共に、研究成果を迅速に活用できる制度改革も行う。