第一三共の子会社で、創薬ベンチャーとして事業再編した「アスビオファーマ」が1日、神戸市のポートアイランド第二期地区に新社屋を開設し、新たなスタートを切った。国内3カ所の創薬拠点を神戸医療産業都市に集約。炎症・再生現象に焦点を当て、新規作用機序を見出すアプローチで研究を加速させる。新社屋で記者会見したアスビオファーマの横山誠一社長は、「積極的に外部と連携し、神戸発の新薬を世界に展開していきたい」と述べ、今後は年1品目の臨床入りを目指す考えを明らかにした。
アスビオファーマは、2002年に旧第一製薬とサントリーの共同出資で設立された「第一サントリーファーマ」を前身とし、国産初の不整脈治療薬「サンリズム」、先天性代謝異常疾患治療薬「ビオプテン」、急性心不全治療薬「ハンプ」等の独創的な製品を発売してきた。
創薬ベンチャーとなった同社は、これまで培った化学合成とバイオ技術を融合させ、炎症・再生現象に関わる基礎研究を重点的に進める。重点疾患を設定せず、新規作用機序を見出すアプローチに転換。プロダクトアウト型の研究開発によって、全く新しいメカニズムに基づいたファーストインクラスの新薬創出を目指す方向性を打ち出した。また、マネジメント体制にプロジェクト制を導入し、階層構造を廃止。長期的な技術・人材育成を視野に、機能別のファカルティ制を取り入れ、研究組織体制も一新した。
現在、開発パイプラインには、国内で発見された成長ホルモン分泌促進ペプチド「グレリン」が拒食症治療薬として国内第III相段階、自社創製のキマーゼ阻害剤が経口アトピー性皮膚炎治療薬として海外第II相段階にある。横山氏は「今後も右肩上がりの成長を遂げるだけの、充実したパイプラインが揃っている」と強調。「年1品目は臨床入りさせていきたい」と目標を語った。
その上で、理化学研究所や京都大学、大阪大学、国立循環器病研究センター、先端医療センターなど、関西圏を中心に外部連携を積極的に進める方針を示し、「知恵を結集した創薬に取り組み、アスビオファーマが中心となって、神戸発の新薬を世界に展開していきたい」と述べた。
また、第一三共との関係について、アスビオファーマが研究開発を受託する形となるが、横山氏は「お互いに競い合い、高め合う関係」と位置づけた。来年4月から両社の人材交流をスタートさせる予定で、第一三共グループとして創薬力を高めたい考えだ。第一三共の中山譲治社長は「第一三共ではできない独創性に着眼し、グループの研究開発で突出した立場になってほしい」と期待を語った。