
永山社長
中外製薬の永山治社長は8日、都内で開いた経営説明会で、スイス・ロシュとの戦略的提携に関して、「これまではロシュ製品の国内上市に相当な力がかかったが、今後は中外の自社開発品でロシュグループに貢献する新たな段階に入った」との認識を示した。特に研究開発は、中外とロシュが共同でグローバル同時開発を加速させる方針で、永山氏は「さらなる連携強化によって、世界トップバイオグループとして成長を続けたい」と語った。
同社は、2002年にロシュと戦略的提携を締結。日本ロシュと合併し、新生中外製薬として再スタートを切った。ロシュグループ入り以来、抗癌剤「アバスチン」をはじめ、導入品を国内投入し、バイオ医薬品を牽引役に売上高を伸ばしてきた。
永山氏は「戦略的提携から8年が経過し、癌領域で国内トップシェアに躍り出るなど、大きな統合成果が得られた」とした上で、「ロシュ製品の国内上市、社内体制のスリム化に力がかかったが、これからは中外の自社開発品でロシュグループに貢献し、中外とロシュが共同でグローバル同時開発を進める新たな段階に入った」と強調。世界トップバイオグループとして、さらなる連携強化を目指す考えを示した。
その上で、研究開発では、外部との共同研究を進めるオープンイノベーションを指向する方針を打ち出し、「ロシュとの人材交流によって、マンパワーの国際化を進めたい」と語った。
ロシュ・シュヴァンCEO‐環境変化で対応策決定へ

シュヴァンCEO
一方、ロシュグループのセヴリン・シュヴァンCEOは、大手製薬企業が挙って多様化を加速させる中、「われわれは科学と革新に焦点を絞る」との方針を強調。「バイオ製品が売上高の多くを占めるため、特許切れの影響が少ない。業界の変化に安定的に対応できる」として、世界的なバイオ企業としての優位性を強調した。
ただ、欧米で薬価の低下圧力に加え、米FDAが「アバスチン」の乳癌への承認取り消しを勧告するなど、規制要件のハードルが高まっていることから、シュヴァン氏は、10年度末までに対応策「オペレーショナル・エクセレンス・イニシアティブ」を決定する方針を明らかにした。中外製薬は対象になっていないとしているが、グローバルで財務体質の維持、コスト構造の転換を目指し、11~12年にかけて対応策を実施することで、革新への投資にリソースを集中させたい考えだ。