昨年、日本市場に本格参入したスウェーデンのEDCベンダー「ファーマ・コンサルティング・グループ」(PCG)は、新たに技術部門とマーケティング部門の増員を行い、自社EDCシステム「ヴィードック」の販売活動を強化している。既に国内での採用実績はCRO5社に拡大。実際に12試験のプロジェクトがスタートしている。特に、使いやすさと低コストのメリットから、医師主導臨床試験で実績が積み重なっている。トーマス・カポネン社長は「今後も臨床研究を行う大学病院へのアプローチに加え、製造販売後調査の分野でも販売を拡大したい」と戦略を語った。
北欧でCRO事業を展開するPCGは、グローバルではEDCベンダーとして、独自開発したヴィードックを販売する戦略を進めてきた。昨年8月には、国外初の拠点として日本支社を立ち上げ、EDCの使用頻度が低い日本で、ヴィードックの拡販に乗り出している。
これまで定期的に開催してきたトレーニングコースの受講者は、CRO8社60人に拡大。実際に5社が採用し、医薬品・医療機器の治験、医師主導臨床試験をはじめ、12試験のプロジェクトが動き出している。既に採用を決定しているCROは20社に上るという。カポネン氏は、「EDCシステムだけでなく、紙のCRFでも、データマネジメント目的で実績が増えている」と手応えを語る。まずはデータを入力する医師、看護師に、ヴィードックの使いやすさを実感してもらうのが目的で、今後も普及活動を積極的に進めていきたいとしている。
一方、日本での成功例となる最初の実績として、昨年からヴィードックを採用しているCROのスタットコムが、医師主導臨床試験で1万2000例の大型案件を受託した。昨年、米製薬最大手ファイザーが計画する、グローバル製造販売後臨床試験の契約に成功した約1万4000例に次ぐ大型案件となる。
スタットコムが受託したのは、冠動脈疾患患者でピタバスタチンの脂質低下療法を検討する、ランダム化比較試験「REAL‐CAD」。脳梗塞や心筋梗塞などの、心血管イベント発症をエンドポイントに設定し、積極的な脂質低下療法を行ったピタバスタチン群で、心血管イベントを回避できるかについて検討するというもので、全国400施設1万2000例を目標とする大規模臨床試験だ。4月からスタートした「REAL‐CAD」は、現時点で1330例のエントリーが完了しており、ヴィードックを採用した初めての大型プロジェクトとなっている。
「REAL‐CAD」は、心血管イベントをエンドポイントに設定しており、大規模で長期間にわたって実施される。また、医師主導の介入試験であることから、効率的に膨大なデータを管理する手段として、低コストでユーザーフレンドリーなヴィードックに、白羽の矢が立った。スタットコムの横堀真データマネジメント部長は、「医師主導の場合はスポンサーがつかないため、医師が自らデータ入力することも多い。その点、ヴィードックはアイコンをクリックするだけでデータ入力できるので、ミスが少なく、初心者にも抵抗なくEDCを使ってもらえる」と実感を語っている。
日本の医師主導臨床試験で大型案件を受託したことは、ヴィードックの使いやすさを証明した格好となった。グローバルの規制対応という、世界標準のEDCシステムとしてのポテンシャルの高さも、海外一流医学雑誌への投稿を目指す大規模臨床研究には、大きなメリットとなる。カポネン氏も「アカデミックな臨床研究の分野にも、ニーズを満たしていると思う。実際、日本の大学研究者にもトレーニングコースに参加してもらっており、今後も安価な価格設定を含めて、アカデミアにアプローチしていきたい」と話している。
日本市場に参入して1年が経過し、医師主導臨床試験というヴィードックの新たな方向性が見えてきた。グローバルでも売上実績が、昨年度比で30%以上と好調に拡大している。カポネン氏は「これからも日本でトレーニングを活発に行い、営業活動を増やすことで、もっとヴィードックの普及を心がけたい」と拡販に意欲を示している。今後は、製造販売後調査の分野でも採用実績を増やしたい考えだ。