2010年もあと数日で終わりを迎えようとしている。今年を振り返ると、薬剤師や薬業界のターニングポイントとなる出来事が相次いだ。
薬剤師にとっての最大のイベントは、やはり6年制薬学教育の下で、初めて学生の長期実務実習が実施されたことだろう。5月に第I期がスタートし、11月には第II期が終了した。これまでにこれといった大きなトラブルもなく、順調に推移してきたのは喜ばしい限りだ。
6年制薬剤師の誕生を1年3カ月後に控えて、必要不可欠なのが彼らの就職を含めた薬剤師の環境整備だ。薬剤師の待遇改善や、業務拡大など解決すべき課題は少なくない。
薬剤師の業務拡大では、今の薬剤師職能で何が不足しているのかを、自ら分析する必要があるだろう。その具体例の一つとして、薬剤師は薬の副作用を理論的には理解しているものの、実際の症例をあまり経験していないことが挙げられる。
年間約3%の医療費の伸びに比べて、薬の使用量はその2倍を超えており、特に抗癌剤は16%の伸長を見せている。投薬の種類や投与量の増加に伴い、副作用の出現が多くなるのはいうまでもない。
従って、薬剤師が副作用の初期症状などを臨床現場で体験的に学習し、病棟や薬局などでいち早く副作用の発生を発見することが、今後の薬剤師職能拡大の大きなポイントになると考えられる。
メーカーからの医薬品情報を集めて咀嚼し、理想的な薬剤投与設計や薬剤投与量の減少に貢献するのも、薬剤師の新しい職能の一つとして注目されている。
また、4月の調剤報酬改定で、新たに認められた後発医薬品体制加算のインセンティブを、今後どのように生かしていくかも薬剤師に与えられた大きな課題である。
改正薬事法に伴う一般薬販売に関する点検事項では、規制緩和の流れの中で薬剤師の役割が問われていることを、しっかりと認識しておく必要があるだろう。
薬剤師を取り巻く環境整備を進めていく上で、とりわけ7月の参議院選挙で見事返り咲きを果たした、藤井基之氏の存在は心強い。
一方、薬業界では、大手製薬企業の主力医薬品が特許切れする「2010年問題」が叫ばれて久しい。
武田薬品の糖尿病薬「アクトス」(米国での特許切れ期限11年1月)、アステラス製薬の排尿障害薬「ハルナール」(09年10月)、エーザイのアルツハイマー薬「アリセプト」(10年11月)など、該当する各社のグローバル製品が目白押しだ。
このような現況の中、薬価制度改革では「新薬創出・適応外薬解消促進加算」が新設された。この加算は、薬価が下がらずに得られた収益を、革新的医薬品の研究開発やドラッグラグの早期解決に向けることを目的としているのは今更説明するまでもない。
市場実勢価格と薬価との平均的な乖離率を下回るのは、価格競争の起こらないニッチな領域での医薬品が多い。従って、「加算対象となった製品のほとんどは、あまり売れていないものばかりで、本来の目的を達し得ない」と、問題点を指摘する声も少なくない。
だが、新薬創出のアシストに国が本腰を入れ出したのは間違いのない事実で、今後、検証結果を生かした薬価制度改革が推進されるだろう。
今年が本当の意味で薬剤師や薬業界にとってのターニングポイントとなり、今後の発展につながっていくことを期待したい。