エーザイの内藤晴夫社長は1日、都内で開いた第3四半期決算説明会で、2011年3月末までの日米欧での承認申請を断念した重症敗血症治療薬「エリトラン」(E5564)の開発について、「ACCESS試験のサブ解析によって、効果のある患者群を絞り、もう一度エリトランで重症敗血症にチャレンジしたい」と、開発継続の方針を示した。今後、ACCESS試験に関する様々な解析を進め、死亡率の低い患者群等の新知見を得た上で、改めて来年度後半にも、エリトランの開発を再スタートさせたい考えだ。
ACCESS試験のトップラインデータによると、主要評価項目に設定した28日間の総死亡率は達成できなかったものの、予備解析の結果から、TLR4拮抗作用と見られるサイトカイン量の減少や、死亡率の低下する患者群が把握されており、安全性についても良好なプロファイルを確認しているという。
これを受け、内藤氏は「いくつかの重要な知見を得た」として、「アンメットニーズが高く、有望な治療薬がない現状にある重症敗血症に、もう一度エリトランでチャレンジしたい」と開発継続の方針を示した。
今後、現在サブ解析中のACCESS試験で得られた知見をもとに、効果のある患者群を絞り、来年度後半にも、エリトランの新たな開発をスタートさせたい考えだが、最終的な方向性については、解析結果を踏まえて判断する。
「エリトラン」は、エーザイが大型化を期待する自社開発の重症敗血症治療薬。日米欧でグローバル開発を進めてきたが、昨年3月には、重症敗血症患者1500症例を対象としたACCESS試験の中間解析結果で、プラセボを上回る有効性を示せなかったことから、試験の継続を決定。新たに500症例を追加し、10年度中の日米欧同時申請を目指していた。
しかし、1月に発表されたACCESS試験の予備解析結果では、主要評価項目を達成できず、当初予定の11年3月末までの日米欧同時申請を断念。今後の開発動向が注目されていた。
抗癌剤「ハラヴェン」、ピーク売上20億ドルへ
エーザイが1日に発表した2011年3月期第3四半期決算で、昨年11月に新発売した自社抗癌剤第一号の転移性乳癌治療薬「ハラヴェン」は、売上高460万ドル(3億9900万円)となった。「計画を上回る立ち上がり」(同社)を見せ、好調なスタートを切った格好だ。1月には、欧州で承認勧告を受けたほか、日本でも薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過し、今春に承認の見通しとなっている。
今後、ハラヴェンは、乳癌の三次治療薬として世界57カ国で承認を取得する計画。12年度には、二次治療薬として米国・欧州で申請を予定しており、さらなる適応拡大によって、ピーク時売上高20億ドル以上を目指す。