日本病院薬剤師会の「病院薬剤部門の現状調査」で、100床未満の施設では、薬剤管理指導料がほとんど算定できていないことが分かった。また、300床未満の病院では、1人の薬剤師が1週間に行う病棟業務時間に、規模による差はなく、病棟に張り付くことのできる薬剤師がいる施設ほど、持参薬管理や処方提案、副作用モニタリングなどを実施している割合が高い実態も明らかになった。
調査は8371施設を対象に実施され、5090施設から回答があった。このうち、何らかの病棟業務を展開していた3974施設について集計した結果、100床当たりの薬剤師数は中央値2・8人で、薬剤師による1週間当たりの病棟業務時間は16・1時間だった。
それを病床数ごとに見ると、薬剤師1人の1週間当たり病棟業務時間は、50床未満、50~99床、100~299床のいずれも、中央値は4・0時間だった。
一方、薬剤管理指導料は、100~299床の施設では、薬剤師1人当たり1カ月5192・5点が算定されていたものの、50床未満、50~99床はともに0・0点と、算定されていなかった。施設基準を満たせないために、業務実態はあるものの、算定できていないものと見られる。
調査では、チーム医療に関して厚生労働省医政局長通知が示した薬剤師が取り組むべき業務9項目と、実際の従事時間数の関連も調べられた。
それによると、9項目の業務のうち、最も現場で実施されていたのは「薬剤管理指導業務」「医療スタッフへの助言・相談」で、常に1病棟に1人の薬剤師がいる施設だけでなく、非専従で複数の病棟を掛け持ちしている施設でも、約9割が実施していた。
ただ、「持参薬管理」「積極的な処方提案」「抗癌薬等の無菌調製」は、1病棟に1人の専従薬剤師がいる施設では7割が実施していたが、薬剤師の常駐実態が少ない施設ほど実施率が下がり、非専従で1人の薬剤師が4病棟程度を掛け持ちしているような施設では、3~4割の実施率にとどまった。
「薬効・副作用モニタリング」「継続的な治療管理」については、専従薬剤師がいる施設では6割が実施していたが、非専任で4病棟兼務の施設では2~3割だった。また、「薬物療法プロトコル・マネジメント」は専従薬剤師がいる施設で4割、非専任4病棟兼務で1割の実施率だった。
医政局通知に含まれていない業務の「与薬や準備」「フィジカルアセスメント」なども、薬剤師の病棟業務時間が多いほど実施率が高く、病棟専従薬剤師がいる施設の半数が実施していた。
日病薬の鈴木洋史常務理事は、「薬剤師の病棟業務時間が長いほど、通知で示された業務の実施率が、右肩上がりに上昇している。薬剤師の病棟業務の密度が高いほど、積極的に医療安全に貢献しているといえる」と分析している。
日病薬では、今回の結果を中心とした報告書を作成中で、鈴木氏は「薬剤師の病棟配置の問題、それと切っても切れない施設基準の緩和の問題について、関連団体に説明して理解を得ていきたい」としている。