
会見する松田社長
協和発酵キリンは21日、癌関連領域に強い英製薬企業の「プロストラカン」を買収すると発表した。買収総額は約394億円。2010~12年度の3カ年中期経営計画で、海外販売体制の整備を打ち出していた同社は、プロストラカンの買収によって、欧米での自社販売網を構築。米国で予定する自社抗体医薬「KW‐0761」の発売を足がかりに、本格的なグローバル展開に乗り出す。
同社の医薬事業は、海外販売網の構築が大きな課題となっていたが、1月に化学品子会社の協和発酵ケミカルを約600億円で売却。今回、その売却益をプロストラカンの買収に活用し、欧米販売網の構築に踏み切った。
これによって、米国と欧州8カ国の自社販売網を一気に確立すると共に、販売中の癌性疼痛治療剤「アブストラル」、制吐剤「サンキューソ」を獲得し、重点領域とする癌領域の製品を拡充。さらに、両製品と同じ品目を開発、申請準備中にあることから、シナジー効果が得られると判断した。
同日、都内で記者会見した松田譲社長は、「われわれが目指すビジョンに向け、確実な一歩を踏み出した。一日も早くパイプラインを進展させ、欧米で獲得した販売網に、製品を乗せていきたい」と語った。
現在、自社抗体パイプラインが進展し、第一号と位置づける抗CCR4抗体「KW‐0761」が米国で第I/II相試験中。数年後の上市が見込まれており、今回獲得した販売網を活用していく考え。今後、英国での各種承認手続きを経た上で、6月上旬には買収を完了させる予定だ。
プロストラカンは、1995年に英スコットランド州に設立されたスペシャリティーファーマ。癌領域以外の主力製品に、骨粗鬆症治療薬「アドカル‐D3」、慢性裂肛治療薬「レクトジェシック」などがある。社員数は約300人。09年度連結売上高は106億7800万円。