日本医薬品卸業連合会が今年、人間で言えば古希に当たる創立70周年を迎えた。本紙でも来週の総会に合わせて特集を組んでいるが、あの『3・11』によって企画内容から祝賀ムードは一切消え去ってしまった。
東日本大震災では、医薬品卸企業の社員一人ひとりが皆、自らが担っている社会的使命の自覚を持って意気を奮い立たせ、この世のものとは思われぬ光景を見ながら瓦礫をかき分けて進み、さらには放射線も恐れずに、医療のあるところ、どこへでも必ず医薬品を届けた。民間人であるにもかかわらず、この意志の強さは自衛隊、警察、消防の人たちにも劣らない。この活躍ぶりは広く国内外に知られるところとなり、日本の卸は面目を躍如した。
一方、薬卸の2011年3月期決算を見ると、言葉をなくしてしまうほどの散々たる結果となった。70周年企画からお祝いムードが消えたのは、何も大震災だけが原因ではない。卸の決算が公表されるにつれ、団体のお祝いをするどころの状況でないことが、明らかになったからだ。
特集のメインタイトルは「日本医薬品卸業連合会70年の検証」で、卸の果たしている社会的使命、他国にはない独自のシステムや物流機能などを取り上げる予定にしているが、隠れサブタイトルを敢えてつけるならば、「日本の医薬品卸に明日は来るのか」となろう。
このような業績となってしまった原因は、いろいろあると思われる。卸が主体となって取り組んでいる流通改善の諸課題は、わずかながらでも進んでいるように見えるが、何十年も前から同じ問題を抱えている事実は、誤解を恐れずに言えば、何も進歩(近代化・改善)していないことを意味するのではないか。
昨年度から試行されている新薬創出加算制度では、制度の成否にさえ影響を与えかねない医療機関の理解を得るという共同作業が、製薬企業による自粛で頓挫して、そこから卸の孤独な旅が始まった。
医療機関・調剤薬局との取引では、価格の下落を阻止すべく、当初は毅然とした態度で臨んでいたものの、最後にはあっけなく押し切られてしまった。
中間流通という業種であるがために卸は、商品を提供するメーカーと、購入する医療機関などに対して、対等に取引ができないことは分かる。しかし、何十年も昔から課題が同じということは、その取引において、正常ではない何かが存在していることは明らかなのである。
では、卸業界内は盤石か。業績悪化の最大の原因に、卸間競争の激化を挙げる社長もいる。自覚の足りなさによって何度も繰り返されてきた呆れた所業だ。これこそ、業界と企業努力で改善できる部分ではないだろうか。
今回の大震災でも得た卸の高い評価を下げることのないよう、今後も知恵と努力が図られることを望む。