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“薬を育てる”国民意識の高揚を

2011年5月27日 (金)

 日本で、ドラッグラグや適応外使用の問題が提起されて久しい。ドラッグラグの主な要因として、「日本の新薬審査期間の長さ」を指摘する声が多い。だが、国内の審査官は、現在、5年前の200人弱から約400人まで増員され、審査期間も欧米の1・1年に比べ、半年ほど遅い1・8年にまで短縮されてきた。

 「専門性のある審査官の育成」が今後の課題となっているものの、国内審査がドラッグラグに及ぼす影響はかなり少なくなっている。

 では、臨床開発期間についてはどうか。日本の臨床開発期間6・1年だが、米国は4・5年、欧州は5・3年と短い。特に、米国との差が目立つ。

 その理由の一つに、米国では疾患ごとに専門病院が確立されているため、治験患者を集めやすいという利点があることや、医療保険制度が異なるため、経済的な理由で治験を望む患者も少なくないようだ。

 だが、日本と欧米との大きな差は、何よりも国民が持つ「皆で薬を育てようとする意識の高さ」にあるのではないだろうか。欧米では、「治験に参加し、自分たちの子孫に役立にちたい」という考えを、大多数の患者が抱いていると聞く。

 日本と欧米の治験着手時期の差も、ドラッグラグの主要因として挙げられている。特に、抗癌剤では、その傾向が強い。治験着手時期については、「日本よりも米国は1・9年、欧州は2・7年早い」というデータもある。

 果たして、治験着手の遅れを短縮する手立てはあるのか。一つの治験に複数の国または地域の医療機関が参加し、共通のプロトコールで同時並行的に行われる「国際共同治験」への参加を促すのも有効な手段となろう。

 だが、その施策を推進する前に、治験着手遅延の原因のとして「薬に対してゼロリスクを求める日本の国民感情」を指摘する、多くの欧米大手製薬企業CEOの声に耳を傾ける必要があるだろう。

 今年に入り、致死的な進行非小細胞肺癌治療薬「イレッサ」に関する訴訟判決がマスコミを賑わせた。だが、海外でも同様のケースで提訴まで至ったかどうかは考えさせられるところだ。

 欧米の製薬企業が、抗癌剤について理解の進んでいる国々で治験を先行し、具体的にどのような患者で効果があるかのPOCを確立した後に、日本で開発するという安全策を選択するのも一理あると頷かざるを得ない。

 ドラッグラグの根本的な解消には、日本の国民に対する「薬のリスクに対する正しい啓発」が必要不可欠だ。それには、国、製薬企業、医療機関、マスコミが手を携えて、「国民皆で薬を育てる」という意識の高揚を図っていく必要があるだろう。




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