薬学教育制度が2学科制になって再スタートしてから6年目を迎えた。既に4年制学科では大学院の修士課程がスタート、6年制学生は最終学年を迎えた。
文部科学省の薬学系人材養成のあり方に関する検討会が開かれているが、既に第一次報告では今後の薬学系大学院の基本的な考え方と、大学院教育充実のための具体的方策が示されている。
これをもとに各大学では、6年制の大学院や4年制の修士課程に続く博士課程(後期・3年制)について制度設計を進めている。
ここで焦点になるのが、二つの学科の大学院の「違いの明確化」だ。4年制と6年制とは同じ薬学であり、違いが分かる大学院に仕立て上げるのは、大変なことだろう。
この点に関しては、既に日本学術会議が提言している。「6年制の大学院では臨床的な課題を対象とする研究領域を中心に、薬剤師に焦点を当てた臨床薬学・医療薬学に関する教育研究を主目的とする。4年制の大学院では、創薬科学等をはじめとする薬学研究者の要請に重点を置いた教育研究を主目的にする」としている。
先日、日本薬剤学会が都内で開かれた際に、「薬学部教育に続く新大学院課程での教育と研究」に関するシンポジウムが開かれた。要は「違いの明確化」に向けた議論を深めるのが狙いだったのであろう。しかし、短時間ということもあり、踏み込んだ話が出始めた頃にタイムアップ。
この中で、卒業生を受け入れる側の代表として、東京大学病院薬剤部長の鈴木洋史氏が、院内でのプロフェッショナルな仕事ぶりを具体的な事例で示し、かつ薬剤部で働きながら医学系研究科博士課程で研究を続ける職員が少なくない現状にも触れた。
結論として、大学における研究の重要性を指摘した。また、医療現場で働いているからこその医薬品開発、医薬品審査に密接した問題への対応など、大学院卒業者が製薬・規制分野でも活躍することが期待されるとした。
その上で、「6年制出身は医療現場で働き、4年制出身者は研究を行うという考えは根本的に誤っている」とした。至極説得力のある論理展開であったと思われる。
ちなみに、鈴木氏の話によると、ある大学では研究室に配属後、放っておかれる6年生もいるとのことであった。もちろん極端な例だろう。しかし、「真の意味の薬の専門家」として、その存続・発展に向け闘っている身にとって、その人材を養成すべき大学が、そのような姿勢をとることは許し難い。
いま、薬剤師を含め日本の薬学は2006年度からの新制度を踏まえ、再編成・再構築の時代を歩んでいる。現場の教師の苦しい声も聞くが、今こそ特徴ある、期待・信頼される新たな大学院、そのベースとなる学部においては、さらなる教育・研究の充実が望まれる。