
ジョーンズ氏
ドイツの受託製造企業「サルティゴ」は、医薬品の製造コスト低減に向けたサービス強化を打ち出す。独自の技術と計算モデルを用い、開発早期段階から製造プロセスのデザインを開始し、将来的な商業生産を視野に、トータルコストの低減を実現させるというものだ。マーケティング・販売担当責任者のトニー・ジョーンズ氏は、「最近、特に医薬品のコスト圧力が高まってきているため、製造コストの低減は重要なポイント」と指摘。高い技術・品質水準が求められる日本の顧客に対し、「化学技術とプロセス設計の両方を強みに、製造コストを低減できる」と訴えている。
サルティゴの強みの一つは、ノーベル化学賞を受賞した、触媒クロスカップリング反応を工業生産に応用していること。この反応を用いることにより、複雑な構造の医薬品化合物を効果的に合成することができ、工業生産スケールで合成プロセスの効率化を実現する。特にノーベル化学賞の受賞は、日本人2氏の功績が認められたもので、ジョーンズ氏は「日本の顧客からも強い興味が寄せられている」と手応えを語る。
こうした合成化学の技術を背景に、最近は医薬品の製造コストを低減させる取り組みも強化している。もともとサルティゴは、開発早期段階からのプロセス最適化を得意としているが、最近は商業生産に向けた製造プロセスのデザインについても、より早い段階で検討する必要があると考えている。代表的な例では、第II相・第III相試験段階から製造プロセスデザインを開始し、コスト削減の検討が行われているようだ。
実際、サルティゴ独自の計算モデルを用いることで、製造プロセスの効率化、トータルコストの低減を実現するデザインが構築できる。また、ラボでは、実験計画法を用いたプロセス最適化、パラレル反応装置を導入するなど、ソフト面とハード面のトータルプロセスでコスト低減を目指す手法が特徴となっている。
ジョーンズ氏は、「製薬企業のコスト圧力が高まる中、われわれは製造プロセスの最適化に多くの知見を持っている」と自信を示す。特に創薬ベンチャーのように、開発早期段階から商業生産時のコスト計算が求められる企業に、メリットが大きいと強調する。
さらにサルティゴは、最新技術を開発する活動の一環として、少ないスペースで商業生産を行えるような、連続反応装置の工業化を検討しており、ジョーンズ氏は「近い将来、われわれの生産能力の一つとして活用できる」とし、「いかに新技術の導入を通じて、高品質とコスト削減に寄与し、商業生産につなげていけるかについて、優れたサービスを提供できるよう、積極的に取り組んでいきたい」とアピールしている。