またまた、日本国の総理大臣が交替した。小泉純一郎氏から何人目か、数えることさえ面倒くさいと国民は辟易していることだろう。海外では首相が誰かではなく、毎年変わることがニュースになっており、米国の報道官にさえ何人目か知らないと笑われる始末だ。日本国民としては、自分たちが選出した国会議員がやっている頻繁な首のすげ替え劇に、何かとても腹が立つ。復興を目指している国難の時期に、こんな政治がまだ続くのかと思うとやりきれなくなる。
同じように人が変わったが、こちらは違う。厚生労働省では人事異動が行われ、医薬関係の各担当課長にも新鮮な顔ぶれが揃った。医薬品業界と深い関わりを持つのが医政局経済課であり、その課長に鎌田光明氏が就任した。経済課は医薬品産業の育成、薬価制度改革から流通問題の改善まで幅広い課題を受け持っている。鎌田氏は、諸課題の解決に向けて業界と積極的にコミュニケーションを図って、調整に努めたい考えを示している。
特に、課長補佐として経済課にいた18年前から変わらずに存在している薬の取引価格形成に関する課題については、変化した卸の環境も含めて、解決するための原因探求を優先したい意向にある。当事者が話し合える唯一の場である流通改善懇談会も、共通認識をまとめるために適宜開催する方針で、「卸からの訴えを聞いて、機動的、機敏、適切に対応する。席に座って待つより主体的に行動したい」と述べており、これまで停滞していた流通改善の取り組みが加速することを予感させ、実に頼もしい限りだ。
一方、医薬食品局監視指導・麻薬対策課長に就任した中井川誠氏は、国民の健康・生命に関わる仕事であり、正当性、分かりやすさ、公平性、恣意性の排除、透明性を心得として業務に臨む姿勢と共に、国際競争力強化に資する品質の信頼性についても取り組んでいく意向を明らかにした。
最近では、国際的な医薬品の品質向上と、それを担保する査察の効率化を同時進行させようという流れが主流になりつつあるが、中でもPIC/S(医薬品査定協定及び医薬品査察共同スキーム)加盟に向けた対応は日本において急務となっている。中井川氏は、PIC/Sに加盟に向けた準備状況を報告しつつ、早期のパブコメを経て、来年度早々にも加盟申請するスケジュールを示した。
監麻課はほかにも、医療監視、医薬品広告、GMP調査体制の強化、麻薬管理の徹底などの重要な課題も担わなければならない。ここでも、業界との信頼関係が大切なキーポイントになろう。
1年しかいない国のトップに期待はかけられないが、強力なリーダーシップを発揮して医薬品産業進展、品質向上、国際対応などに貢献する課長たちの辣腕に期待しよう。