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中学の薬教育は職能発揮の場

2011年09月09日 (金)

 2008年3月に改訂された中学校の学習指導要領で、「医薬品の正しい使い方教育」が盛り込まれ、来年度から保健体育の授業で行われる。一般社会では、薬を理解して正しく使うことが求められてきたが、義務教育の中で「医薬品の正しい使い方」の授業が実施されるのは今回が初めての試みとなる。

 従来から、小・中学校で任意に行われてきた薬物に関する教育は、薬物乱用防止の視点から薬の啓発、禁煙に結びつけていく内容のものが大半で、児童や生徒に「闇雲に薬とは悪いもの」という印象を抱かせる懸念が指摘されてもいた。

 それに対し、今回の薬教育では、「医薬品は疾病の診断、治療、予防のために使用されるもの」と明確にしているのが大きなポイントだ。医薬品本来の役割と、医薬品が併せ持つ主作用と副作用、適正使用の重要性の理解を目的としており、国民がリスクとベネフィットの判断を身につける絶好の機会となるだろう。

 薬教育の究極の目的は、セルフメディケーションの推進にある。目的達成には、特にOTC薬に重点を置いた授業内容が要求される。

 このような現況の中、より効果的な薬教育を行う上で、学校薬剤師の積極的な活用による専門性を生かした取り組みが必要不可欠になる。では、学校薬剤師が積極的に参画するには、どのような手立てが考えられるのか。

 大阪府薬剤師会では、07年度から大阪市内の小学6年生を対象に、学校薬剤師が「お薬講座」を実施している。

 小学校での医薬品に関する指導は学習指導要領に盛り込まれていないものの、教育委員会や校長会の了承を取り付けて開かれてきた。また、高校の学習指導要領には既に「薬の適正使用」が盛り込まれているため、講座は小・中・高と継続した薬教育を目的としている。

 講座は、初年度は14校のみの開催だったが、現在では大阪市内297校のうち230校にまで増加している。

 増加した要因は、学校薬剤師が、水質検査、照度検査、空気検査などの従来の業務を通じて、薬剤師職能のアピールに務めてきたことが大きいと思われる。

 薬剤師職能を理解してもらうことで、学校長、教頭、養護教諭らとのコミュニケーションが深まり、「お薬講座」拡大へとつながっていった。行政、大阪府薬、大阪府学校薬剤師連合会との連携も見逃せない。

 中学校の薬教育は、学習指導要領に盛り込まれたとはいえ、誰が担当するかは明記されていない。大阪府薬では、小学校での「お薬講座」拡大の経験を生かして、各中学校でのチームティーチング(TT)への積極的な参加を図っている。

 全国の学校薬剤師が中学校の薬教育で専門性を発揮し、一般市民への薬剤師職能PRに大きく寄与することを期待したい。



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